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Guitar Lab【2018ギター工房放浪記。】

Guitar Lab

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船橋に根を下ろして35年、ベテランの技術が光る老舗工房

 この時代においても発展著しい船橋駅周辺だが、庶民的な佇まいの天ぷら屋や船橋市地方卸売市場など、漁師町としての名残も残している。訪ねたのは、JR総武本線・東武野田線の船橋駅から徒歩6分、京成船橋駅から徒歩4分のところにあるビルの2階。リペア歴35年のベテラン、伊藤澄氏が1985年に立ち上げたGuitar Labだ。自宅を改修した工房からスタートし、その後、船橋駅の北口にお店を出して、楽器の中古売買も開始。約10年前に現在の場所に移転して、オリジナル・モデルの製作・販売も行なっている。

「リペア業を始める前は、フジゲンさんに2年ちょっと勤めていました。当時はリペアに対して軽い見方をしていて、ギターのことを一番わかってるのは工場の技術者だと思っていたんですけど、いざリペアをやると全然違う難しさがある。今はリペアマンが技術的には一番上だと勝手なことを思ってます(笑)。だから、製造と修理と流通、この3つに精通していないと、本当に楽器がわかってるとは言えないんじゃないかなと」

 国内で、まだリペアの技術が確立されていない時代から経験と研究を重ね、独自の技法を開発。海外高級ブランドの輸入代理店や楽器店からも厚い信頼を得てきた。

「変わらないこだわりは、丁寧にやることです。品質面は妥協しない。でも専門家ぶらないで、誰が来ても腰が低いということは気にかけています。たまには無理なオーダーもありますけど、そういう場合は説明しますね。人間に例えたら、高齢のおばあちゃんに豊胸手術なんてやっちゃだめでしょ(笑)? 長い目で見れば、結果的にお客さんにとってもいいと思うことはありますからね。オーダーは全国からありますが、地元の方も多いですね。こちらも直接のほうがやりやすいし、教室の先生も多いです。そうすると、その生徒さんが紹介で来てくれたり。そうやってリピーターの方々に支えられています(笑)」

 かつては4~5人のスタッフを抱え、月に100本ものリペアをこなす時期もあったが、現在はひとりで行なっている。やはり、すべて自分でやったほうがスッキリするとの理由からだ。具体的な技術面では、特にフレットの擦り合わせが得意ということで、ホームページには“使用時と同じ負荷を掛けながら擦り合わせをする現在の方法に到達”とあるが、その作業の模様は残念ながら非公開。その代わりというわけではないが、自宅を改装したかつての作業場と、その一角にある現役の塗装ブースに案内してくれた(記事トップ写真)。

「本当は塗装が好きなんですけど、時間がかかるわりに儲からない(笑)。でも、おもしろいですね。だんだんと手順を重ねていって、最後にフィニッシュする。うまくいった時の快感は、もうたまりません」

 近年では、オリジナル・ブランドであるDouguの開発・製作にも注力している(下写真)。イチ押しはBlues-Club BC-1(税別250,000円)だ。

「ブリッジはオリジナルで、ベース・プレートはあえて薄い鉄板を特注して作っています。また、ブリッジの下にも秘密の構造があって、リア・ピックアップのエスカッションは、テレキャスのリアの形のオマージュですね(笑)。ネック周りとブリッジは変更できないんですけど、ボディ材とかシェイプは融通が利かせられるし、カラーは自由に選べます。ピックアップも先日2ハム希望の方がいらっしゃって作りました(BC-2)。それと、ベースもあります。これが完成形と思っているわけではないので、まだまだ実験してみたいことがいっぱいあるんですよ」

 ちなみにDouguブランドではないが、ソリッド・ボディのギター/ベースであればオーダーメイドも可能だ。そして、Douguブランドの今後も楽しみだが、軸足はあくまでリペアにある。

「いわゆるビンテージじゃなくても、国産の古いギターを大事に使ってる人、そういうものを直したいっていう人を応援したい。リペアのお客さんに満足していただいて、さらにDouguのギターにも満足してもらえたら最高ですね」

Shop Data

Guitar Lab(ギター・ラブ)
〒273-0002 千葉県船橋市東船橋1-17-29
047-422-8303
http://www.guitar-lab.com/

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