Bose S1 Pro+ wireless PA system × 松井祐貴&井草聖二
- 2024/04/25
Seide / TDW
数多くのワイヤレス機器を手がけてきた“Seide(ザイド)”。中でもこのTDWシリーズは、幅広い用途で使用できるハイクオリティな製品だ。周波数帯域にはWi-FiやBluetoothの影響を受けないB帯を使用。プロユースに耐える仕様ながら、手軽な価格であることも注目ポイントである。今回は、普段からライブでワイヤレス・システムを使うMY FIRST STORYのTeruを試奏者に迎え、製品の魅力を探っていこう。
ノイズや音切れの少なさに注目
近年は高性能で低価格のモデルも続々と登場しているワイヤレス・システム。しかし、読者の中には操作や音質、音切れなどが不安で、さらに高価なイメージもあることから、これまで導入を検討しながらも見送ってきた人は多いのではないだろうか。すでにワイヤレスを活用している人はもちろん、ワイヤレス初心者に特にオススメしたいのが、SeideのTDW Belt Pack Setだ。ワイヤレスは使用する周波数帯により、いくつかの規格があるのだが、本機は電波使用の免許が不要で、Wi-FiやBluetoothといった通信機器の影響も受けない“B帯”と呼ばれる周波数帯を使用しているのが最大のポイント。30chに対応しており、混線などのトラブルにも即座に対応可能である。同一空間で6台まで同時使用することができるうえ、ダイバシティ方式という高い送受信性能を持っているため、ノイズや音切れも非常に少ない。
また、レシーバーをラックに収められる専用金具が用意されているほか、管楽器などに使用できるタイピン・マイクやヘッドセット・マイクも付属するという充実の内容。プロユースの仕様でありながら、ワイヤレス初心者にも手の届きやすい価格に抑えられているのもうれしい限りだ。ぜひ本機を手に入れて、開放感あふれるアグレッシブなステージングを楽しんでみてほしい。
B帯とは800MHz帯の周波数のこと。ワイヤレス機器は使用する周波数に応じて規格が分かれており、国内ではA帯、B帯、C帯(300MHz帯)、2.4GHz帯などがある。このうちA帯のみ、使用するには免許が必要で、放送や大規模なライブで用いられている。C帯は、通信距離こそ長いものの音質が粗いため、おもにインカムなどに活用される。個人で楽器用となると、B帯か2.4GHz帯のどちらかと考えていいだろう。いずれも音質は良く、2.4GHz帯はB帯よりも同時使用の上限が広い一方、Wi-FiやBluetoothなどと同じ周波数帯なので、電波干渉を受けやすい(上位機種には干渉を回避する機能が設けられている)。その点、B帯は同時使用の上限こそ狭いものの、電波干渉には強いため、現在は楽器用ワイヤレスの主流となっている。
僕はワイヤレスの使用歴は長くて、高校生の頃には使い始めていました。もちろんギターを始めた頃はシールドをつなげてましたけど、やっぱりギターの取り回しが楽なので、今では基本的にどこでもワイヤレスです。それに僕らは、ライブでけっこう動き回るバンドで、立ち位置も入れ替わりまくるので、シールドだと足に絡まっちゃうんですよ(笑)。だからライブの規模に関係なく、100人キャパでも2万人キャパでもワイヤレスなんです。
このTDW BELT PACK SETを使ってみてまず初めに思ったことは、液晶が見やすいってこと。バッテリーの残量もトランスミッター側だけじゃなく、レシーバー側でも確認できるのは大きいですね。グラフィック表示というのも良いですし、5段階表示なのもうれしい。僕が昔使っていたモデルは3段階表示だったんですよ。最後の1段階になると、どこで電池が切れてしまうのかわかりづらくて怖かったんですよね(笑)。
設定もとても簡単だと思いました。トランスミッターのセンサーをレシーバーにかざして、レシーバーのボタンを押すだけで空いているチャンネルに自動的にふり分けてくれるので楽ですよね。昔はこれに何段階かの操作が必要だったんです。
シールドでつないだ時とサウンドを比べると、思った以上に音がやわらかいし、スッキリしています。耳に痛いところがなくなるというか、いい意味で音がまとまっているので、音作りもしやすいんじゃないでしょうか。
ちなみに僕が高校生の頃って、そんなにワイヤレスのラインナップもないし、高いモデルを買う余裕もなく、3、4万円ぐらいのモデルを何とか探して使っていたんですよ。でも、それがものすごく音ヤセをするもので(笑)。TDWはそれと同じ価格帯で、なおかつ音が良い。ワイヤレスも進化してるんだなって思いました。これならワイヤレス初心者でも入りやすいし、もうこれで十分なんじゃないかと。この価格で、このクオリティの高さは驚きですね。
ここではワイヤレス歴の長いTeruに、基本的なアレコレや使用時の注意点などを聞いた。ぜひ購入時の参考にしてみてほしい。
もとは2.4GHz帯のモデルを使っていましたが、今のバンドが始まった頃、PAの方にB帯のワイヤレスを勧められたのがきっかけです。2.4GHz帯と比べると、B帯のほうが音が素直な気がしますね。もちろん環境によるとは思うんですけど、距離が離れていても信号がつながりやすいんで、音切れは少ないです。
バンド・メンバーもみんなB帯のワイヤレスを使っているんです。だからお互いの信号が被らないように事前に相談して調節することが必要ですね。あと、僕はライブでイヤーモニターも付けていて、その信号もB帯なので、たまに干渉してしまう時があるんですよ。その時も調節しないといけないので要注意ですね。
もちろん多少の変化はするんですけど、昔に比べれば、違いはほとんどなくなっていると思います。TDWもそうですが、レイテンシー(信号の遅れ)を感じないですし、独特のマスキングされた音が好きな人もいると思います。僕は微妙な音色の変化も見越して、普段のエフェクターの音作りもワイヤレスをつなげてやっています。
シールドをつないだままステージを歩いたりしてると、踏んでしまってケーブルが断線することもあるじゃないですか。そういうトラブルも避けられるのは良いですね。でも何よりも、足元を気にしないでライブができるっていうのがとにかく楽(笑)! 今、急にシールドに戻れと言われても無理ですね(笑)。
ボーカルやナレーションなどに使えるハンドヘルド・セット。マイク・ホルダーやラック・マウント、専用ポーチなどが付属する。
最大4台のレシーバーをカスケード接続で運用できるフロント・アンテナパネル。
より良い通信状態を保つことができる単一指向性の外部アンテナも発売予定。
本記事の一部はリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2019年6月号』にも掲載されています。今号のギタマガでは、「チューブスクリーマー40年史」と題して、日本が生んだオーバードライブ/ブースターの名機、チューブスクリーマーを大特集。TS808やTS9を初めとする歴代機種のギャラリーや、担当者による開発秘話、プロ・ギタリストの私物TSの使い方を探る「俺とTS」など、盛りだくさんの内容。ぜひチェックしてみてください!
価格:オープン
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Teru(MY FIRST STORY)
てる◎2011年に結成したロック・バンド、MY FIRST STORYのギタリスト。2019年1月の横浜アリーナでの公演を収録したライブDVD&BD、『S・S・S TOUR FINAL at Yokohama Arena』が5月29日に発売予定。