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  • 無限の可能性を秘めたマルチボイス・シンセ・ペダル

Meris / ENZO reviewed by 中西道彦(Yasei Collective)

Meris / ENZO

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 Merisは米国カリフォルニア発のエフェクター・ブランドだ。2014年に設立された若いブランドではあるが、長年Line 6でアナログ回路などのハードウェア・デザインを担当していたテリー・バートン、同じくLine 6にてFM4やToneCoreシリーズの開発に携わったアンジェロ・マゾッコらによって立ち上げられたということもあり、エフェクター・フリークからはかねてより熱い注目を集めていた。今回紹介するENZO(エンツォ)は、ベース専用ではないながらも、これまでにないトラッキング性能を持ち、近年流行しているシンベ・サウンドの再現にはもってこい。さらに、アルペジエイターやリング・モジュレーション、エンベロープ・フィルター、ディレイとしても機能するので、アイディア次第でこれまでのベースでは表現できなかったサウンドを生み出すことも可能だ。(★)

Meris / ENZO

▲バック・パネルにはインプット(TRS端子も対応)、ステレオ・アウト、エクスプレッション・ペダル端子を装備。ステレオモード、LINE/INSTレベルを変更した際はLEDが点灯するので、モードの把握もわかりやすい設計となっている

Nakanishi's Impression
中西道彦(Yasei Collective)が斬る! Meris / ENZO

 まず、このデザインがとても素敵だと思いました。実物を手に取ってみると思ったより小さく、この筐体のなかによくぞこれだけの機能を詰め込むことができたものだ、と感銘を受けます。普通のコンパクト・エフェクターなどと同じような感覚でエフェクト・ボードにも組み込むことができるでしょう。

 多機能シンセ・ペダルと聞くと身がまえてしまいますが、操作のキモは左の小さいボタン“ALT FUNCTION”ボタンを押しながら行なう、裏パラメーターの調整。そしてエフェクトのかかりに直接作用する真ん中の“FILTER”と“FILTER ENV”つまみの調整です。ここさえ押さえてしまえばあとは“全部使える音色”が出てきますので、調節していく作業も楽しいと思います。実際、箱から出して説明書(Mix Waveの製品サイトから日本語マニュアルがダウンロード可能)を読みながら15分くらい触っていると、急に霧が晴れたように各つまみの意味が“サウンドとして”わかってきます。とてもおもしろい体験でした。

▲バイパス・スイッチの上部にあるモード・セレクト・ボタンで、モノフォニック/ポリフォニック/アルペジエイター/ドライ・モードを切り替える

▲タップ・スイッチの上部には、ALT FUNCTIONボタンを装備。こちらを押しながら各ツマミ/スイッチを操作することで、“裏”に割り当てられたパラメーターを調整することができる

 4つのモードは、リードやベースに最適な“Mono”、空間を支配する重厚な“Poly”、人力では演奏できないシーケンス・フレーズが演奏できる“Arp”、クリーン・サウンドに3系統のエフェクトがかけられる“Dry”と、どれもとても使える音色です。

 “Mono”モードでは非常にトラッキングが速くエラーも起きづらいし、速いフレーズに対する追従性は素晴らしいです。シンセ・ペダルもここまで来たか!と感じさせるクオリティ。そして上下2オクターブのレンジにより、アタックが遅いファットなシンベから、レゾナンスが効いたファンキーなリードまで破綻なく出力できます。和音プレイに対応した“Poly”もとても新しい発想で、ベースとは思えない重厚なシンセ音が作れます。例えばギター・トリオみたいな少人数編成でも思いっきり広がりのあるアンビエント・セクションが作れますね。個人的には、曲中で低域を抜いて広がりを出したいセクションに使用すると唯一無二のサウンドが出せるので、このモードだけでもとても価値のあるペダルに感じました。アルペジエイター・モードの“Arp”は、MIDIで同期させたり、トラック制作でドラムとかにかけたりしてもおもしろいのではないでしょうか。“Dry”モードは言わずもがな、高性能なピッチシフター+エンべロープ・フィルター+ディレイとして使えます。

 そして、これだけの機能を持ちながら、このサイズにまとめあげたところに、ENZOはマルチ・エフェクターでは“ない”という主張を感じます。つまり、“多機能な何でも屋さん”というよりは、ひとつ決めた“この音!”を使って音楽を作ってほしい!という主張です。実際、どんなセッティングも“この音はこういう使い方したいな!”とインスピレーションがどんどん湧いてきます。ただし必要であれば、別売の4プリセット・フットスイッチ、MIDIでのリアルタイムなパラメーターの操作、ビートシンクなど、ENZOを中心に配してさまざまな使い方に対応していける懐の広さも併せ持っています。ステレオにも対応しているので、宅録のトラックをENZOに通してみたりしてもおもしろい……と、使い手のイマジネーションを実現する幅の広さと、潔いパッケージングという一見相反するふたつの要素が、この1台に集約されている。そう考えると、これは2020年代の飛び道具ペダルの決定版になりうるポテンシャルを存分に秘めていると言えそうです。

ベース・マガジン 2019年8月号 発売中!

190719_BM_2019_08.jpg 本記事はリットーミュージック刊『ベース・マガジン 2019年8月号』の特集記事を一部転載したものです。今月号の表紙は、結成15周年を迎えたUNISON SQUARE GARDENの田淵智也。ほかにも、草刈愛美(サカナクション)やIKUOの特集インタビューなどなど盛りだくさんの内容ですので、ぜひチェックしてみてください!

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製品情報

Meris / ENZO

価格:オープン

【スペック】
■変換:24ビットA/D及びD/A ■DSP:32ビット浮動小数点 ■サンプルレート:48,000Hz ■入出力端子:インプット、レフト・アウト、ライト・アウト、エクスプレッション/MIDIイン ■電源:9V ACアダプター(付属) ■外形寸法:108(W)×114(D)×51(H)mm ■重量:414g ■市場実勢価格:34,500円(税別)前後
【問い合わせ】
ミックスウェーブ TEL:03-6804-1681 https://www.mixwave.co.jp/
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プロフィール

中西道彦
なかにし・みちひこ●1981年8月30日生まれ。16歳でベースを手にし、ファンク・ミュージックに傾倒する。24歳で渡米し、帰国後、ロサンゼルスで出会った松下マサナオ(d)らとともにYasei Collectiveを結成。エレクトロ、ジャズ 、ロック、ヒップホップなどが融合したNYシーンの音楽を体現している。

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