ヘッドウェイの桜10周年記念モデル、第一弾としてSAKURA'24&YOZAKURA'24の全8機種が登場
- 2024/03/19
Seymour Duncan / Dark Sun - Digital Delay & Reverb
リプレイスメント用ピックアップのメーカーとして、圧倒的な知名度を誇るセイモア・ダンカン。同社はピックアップのみならず、良質なエフェクト・ペダルを数多くリリースしていることでも知られている。今回紹介する同社の新製品が、デジタル・ディレイとリバーブのハイエンド複合機Dark Sun - Digital Delay & Reverb(以下、Dark Sun)だ。このモデルは、もともとジェント系バンドの代表格であるPeripheryのギタリスト、Mark Holcombの要望によって生まれた。
ジェント系、Peripheryといえば攻撃的かつ複雑な重低音リフが真っ先に思い浮かぶが、実は同じくらいアンビエントなパートも重要で、その両極を行き来することで楽曲の魅力を高めている。Mark HolcombはダンカンのAndromeda - Dynamic Delay、Silver Lake - Dynamic Reverbの愛用者でもあるが、この2つのペダルの好みの音をひとつの筐体にまとめ、ルーティングも自由に行なうことはできないか──という要望から生まれたのがDark Sunだ。
Dark Sunは、Mark Holcombお気に入りの“デジタル・ディレイ”と“ホール・リバーブ”を搭載している。実は、ここがひとつのポイントだ。現代のアンビエントには古めかしいテープ・エコー的なサウンドや、鳴りの小さい“ルーム・リバーブ”、ビチャビチャとした“スプリング・リバーブ”は似合わない。多彩なサウンドにすることも当然できたが、あえて現代的なアンビエント・サウンドにマッチする音だけが詰め込まれている。
では、音の幅が少ないのかといえば、まったくそんなことはない。32のバンクに4種ずつ、計128種ものプリセットがあり、これだけでも必ず好みの音が見つかるだろう。もちろん、自分で作った音をプリセットすることも可能で、さらに本体横のマイクロUSBポートを使用してアップデータ/ライブラリアン・ソフトウェアに接続し、世界中のユーザーとオリジナルのプリセット音を共有、ダウンロードすることもできる。
Markから要望があったルーティングに関しても、専用のノブをひとつ回すだけで、ディレイを先にしてリバーブを後、リバーブを先にしてディレイを後、さらにステレオ出力時にRがディレイでLがリバーブ、反対にRがリバーブでLがディレイといったことが簡単にできる。
このように、操作が簡単な点もDark Sunの特徴だ。細かい操作方法は動画をチェックしてもらいたいが、ディレイの返りのリズム(4分音符、付点8分音符、8分音符など)の切り替えもひとつのノブ操作で可能だし、モジュレーションを加える、ウェット音のイコライジングをするといったことも簡単な操作で行なえる。
そして、ギタリストの表現力を高めるダイナミック・エクスプレッション機能も本器ならではの特徴だ。ディレイやリバーブを深めにかけて、ホールなどで演奏すると聴かせたいメロディーが埋もれて聴き取りにくくなってしまうことがある。この機能は、強くピッキングをしたアタックにだけウェットがミックスされず、その後のサステインや弱いピッキングにはウェットがミックスされる独自機能だ。これにより、メロディーの立ち方、聴こえ方が変わってくる。
アンビエントに特化し、ハイエンド機と呼ぶに相応しい音色と機能を持ちながら、扱いやすい──それがDark Sunの魅力となっている。
見た目はノブやボタンが多く見えるが、チェックしてみると実は操作が簡単なことがわかった。ハイエンド複合機にありがちな、深い階層に入っていってパラメーターを操作するといったことは一切なく、すべて筐体表面に設置されたノブ、ボタンの操作で済む。それも、重要なノブはリバーブの効きを決定するR.SizeとR.Mixの2つ、そしてディレイを調整するTime、Feedback、D.Mixだけだ。単体のリバーブやディレイを触ったことがある人なら、何の問題もなく操作できるだろう。
ほかのノブやミニ・ボタンは、いわば色付け。大枠の音作りを前述のノブで設定したら、より好みの音、使いやすい音に追い込んでいくためにある。極端な話、その辺りには触れずとも好みの音を作れるだろう。この快適性は、ぜひ試して実感してほしい。
肝心の音についても、質の高さと潔さが印象に残った。単なるディレイ音、リバーブ音というよりは、非常に音楽的な残響が広がるため、このペダルから作曲のインスピレーションを受ける人もいるだろう。変にレトロな音などは、基本的にはない。変態的なモジュレーションやシマーがかかった音はたくさんあるので、楽しめることは保証する。
何度も“現代的なアンビエントに特化したモデル”と書いているが、だからといってジェント系のプレイヤーにだけ独占させるのはもったいないモデルだ。ある程度ハイエンドな機種になると“なんでもできます”が売りで操作も複雑というものが多いなか、個性をはっきりと打ち出しているDark Sunには好感が持てる。ぜひ店頭でほかのハイエンド機と弾き比べ、Dark Sunの個性を体感してほしい。
ディレイに必要な要素をすべてひとつの筐体におさめたプログラマブル・デジタル・ディレイ。デジタル・ディレイ/アナログ・ディレイの2種のディレイ・タイプが選択可能で、それぞれにNormalディレイ、Ping Pongディレイ、Reverseディレイ、Reverse Pongディレイと4つのエフェクトがあり、合計8種類のディレイ・サウンドが使用できる。さりげないエフェクトから効果音まで多種多様な使い方が可能で、従来のデジタル・ディレイとは比べ物にならないほどコントロールに幅を持っているのが特徴だ。
8つの美しいリバーブ・アルゴリズムを持ち、豊富なトーン・シェイピング・オプション、独自のダイナミック・エクスプレッション・コントロールを組み合わせたプログラマブル・リバーブ・ワークステーション。ROOM、SPRING、またはPLATEやHALLなどのトラディショナルで表現豊かなリバーブを4種類、Shimmer、Swell、Gated、Delay/Verbといった特殊なモードも4種類塔載しており、必要に応じてさまざまな深みのあるリバーブ・サウンドを作り出すことが可能だ。
価格:¥62,000 (税別)
価格:¥47,000 (税別)
価格:¥55,000 (税別)
井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
日本で唯一の、沼鑑定士(自称)。 1日5回デジマートを見る、機材大好きのギタリスト/レビュアー/ライター/ワウペダル奏者。 インスト・ファンク・バンドZubola Funk Laboratoryのメンバー。 2019年3月より、ドラムとギターのみの変態インスト・バンド「Ragos」を始動。マスクをするとデジマート地下実験室の室長に似ているらしい。