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  • Special Interview:開発者に聞く、アメリカン・アコースタソニック・シリーズの革新性

【Fender/NAMM2020】American Acoustasonic Stratocasterの開発秘話

Fender / American Acoustasonic Stratocaster

The NAMM Show 2020のフェンダー・ブースで最も注目を集めた製品は、American Acoustasonic Stratocasterだろう。今回現地では、Acoustasonicシリーズの開発者であるブライアン・スワードフェガーとティム・ショウのふたりへのインタビューを実施することができた。レオ・フェンダーの意思を継ぐ現代のフェンダーが起こした、“アコースティック・ギターの革命”について話を聞いていこう。

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ボディをStratocasterにするだけではダメなのです

──そもそもAmerican Acoustasonicシリーズのアイディアはどのように生まれたのですか?

ブライアン 最初は夢の段階でした。“何か今までとは違うものを作れないか”というアイディアを漠然と抱いていたのです。そして、新しいアコースティック・ギターを製作する話が出た時、私はトラディショナルな形状のアコースティックギターである必要はないと考えました。誰も作り上げたことがないような新しいアイディアがあっても良いと思ったのです。そこで我々は初期段階でいくつかのスケッチを描き、ティム(ショウ)のところへ行きました。お互いにアイディアをブレインストーミングして、どのようなことができるかを話し合いました。実はこのプロジェクトは“モダン・アコースティック”というニックネームが付いていたのですが、それもあって今まで見たことがあるようなアイディアは意図的に避けていたのです。我々は設計段階で多くの時間と労力をかけましたし、解決策が見つからない時は“モダンな方法で解決できないか?”という考え方を常にしていました。例えば“モダンなペイントの方法があるか?”、“ロゴのインレイでのモダンな手法は?”といった具合に。

ティム それに加え、同時にフェンダーとして大切にしてきた伝統も反映しています。開発に関わったスタッフは自分たちに問いかけるのです。“レオ・フェンダーがこの工具を手にしていたらどうしただろうか?”と。そうした概念を“シンプルな機能性”、“一貫性”というレオのスタイルに落とし込んでいき、詰め込み過ぎないようにひとつずつうまく組み合わせることに成功したのです。我々は自分たちの原点を理解し、世界から求められていることを理解して、我々の存在意義を確立したかった。

ブライアン ただ、それでも馴染みやすいものにしなくてはならない思っていました。ティムが言ったように、“もしレオ・フェンダーが作るとしたらどんな作品を想像するか?”という考えは非常に重要で、レオは常に新しいアイディアを追い求めていたのです。今はスタンダードになっているTelecasterでさえ、1950年代当時はほかのギターと違ってとても奇抜に見えたはずです。我々も同じように、フェンダーとして新たなスタンダードを生み出したいと考えたのです。

──今回は待望のStratocasterですが、いつ頃から開発は始まったのでしょうか?

ティム Acoustasonic Telecasterが開発された時から我々の中ではすでに考えていました。Acoustasonicというひとつのプラットフォームができて、通常のTelecasterやStratocasterもプラットフォームです。それをもとに多様な姿へ展開していけるのです。

ブライアン ひとつのファミリーのようなものですね。親がいて、性格もさまざまな子供がいる、見た目もそれぞれ違いがあり、声も違う。レオ・フェンダーもTelecasterを作り上げてからStratocasterが誕生しましたが、それぞれ違う特性を持っています。Acoustasonic TelecasterとAcoustasonic Stratocasterもそれと同じなのです。

ティム ただ、やはりStratocasterの場合、象徴となるサウンドを受け継いでいる必要があります。Acoustasonic TelecasterのボディをStratocasterにするだけではダメなのです。独自のパーソナリティ、特色を持っている必要がありました。

その過程は料理と似ている部分があるかもしれません

──新しくなったボイス・セレクションの中で目を引くのは、エレクトリック・サウンドに加わった“Dirty”です。これはどういったサウンドなのでしょうか?

ブライアン 同じファミリーに属しながらも違いを持たせる必要がありました。すでにAcoustasonic Telecasterの開発で得た沢山の知識を、新しいボイスの探求に持ち込んだのです。実はAcoustasonicから出力されている音の55%は、シャーシから発生しています。ボディ自体から出ている音ですね。それを私たちがFishmanと共同開発したDSPを用いてエンハンスし、さまざまなトーンの創出を実現しているのです。今回はまた違った音にしたかったので、出したい音をイメージすることから始めました。ボディの小さなギターの音、大きなギターの音、ドライなサウンド、ウェットなサウンド……ボディをタップする音にはボディ・センサーを、またそれを活かしてハーモニックな要素を含めたり、私たちが実現したいものをすべて具現化していったのです。

ティム サウンドを決める作業にはとても多くの時間を費やしましたね。Telecasterのボイス・セレクションがとてもうまくいったので、今回のStratocasterもプレイヤーをインスパイアできる一新された個性的な音にしたかったのです。ですから本当に細かくボイス・セレクションを吟味しました。ブライアンと私は何度もFishmanのスタジオへ訪問し、1日6〜8時間くらいかけて皆さんが驚くくらい細かく、音のチェックを行ないました。みんなで同じ部屋に入り各トーンのリスニングを行なう、これはE-Mailでは行なえない作業ですからね。

ブライアン その過程は料理と似ている部分があるかもしれません。もう少し塩が必要かな?とか、もう少しトマトを入れよう、みたいな感じでクック&テイストを私たちでくり返す。煮詰まったら外の空気を吸いに行き、リフレッシュしてまたリスニング・セッションをくり返し、スタジオ内の皆が目を合わせて頷きながら”これだ!”となる瞬間があるのです。

ティム 私たちの頭の中には“ストラトならこういうサウンドが出るべきだ”というイメージがありました。そのエッセンスを引き出し、皆さんに納得いただけるAcoustasonic Stratocasterのサウンドを作り上げることがとても重要だったのです。“Dirty”はギター・アンプのノブを10まで回した時に得られるオーバードライブ・サウンドを再現しています。もう少しオーバードライブを減らしたければ、“FAT/Semi-Clean”側にノブを回せば良い。私たちも半日オーバードライブ・サウンドを試していて楽しかったんですよ。だから、弾いていて楽しいと思えるこのボイスを含めたのです。

ブライアン アコースティックのボイス・セレクションが終わってからエレクトリックに取り掛かったのですが、どれくらいのオーバードライブ・サウンドを入れるべきかを時間をかけて考えました。行き過ぎたり戻ったりをくり返して、バランスの良いサウンドの判断ができたと思います。

ティム Telecasterはアコースティックもエレキも出せますが、エレキのボイスはふたつでした。Stratocasterは“Dirty”があることで、エレキ用のボイスが3つになったのです。また、ピックアップの搭載位置も変えています。実際のStratocasterでブリッジ・ピックアップが搭載されているのとまったく同じ位置にしているのです。StratocasterはTelecasterよりも少しブリッジ寄りに設置されていますが、これによりピックアップへのレスポンスも大きく変化するのです。とてもアナログな観点ですが、伝統的なTelecasterとStratocasterの違いと一緒ですね。

最後に作ったプロト・ギターを弾いた時、これなら私も弾きたいと思えた

──アコースティックのボディにボディ・コンターが入っているのがとても新鮮です。これはStratocasterとしてはやはり入れるのはマストだったのでしょうか?

ティム 今回はボディにコンター加工を施す必要がある事は認識していました。しかし、一般的なStratocasterと同じくらい深くコンター加工してしまうとボディ内部の空間が小さくなってしまいます。ですからAcoustasonic Stratocasterでのコンター加工は通常のストラトに比べると浅いのです。アコースティック・ギターの場合、ボディの体積が楽器の鳴りに直結するため、影響を与えないようにコンター加工を施しました。私たちはボディ内部のキャビティがどのような働きをしているか理解しています。サウンドポートの裏からボディ・バックまでの距離が重要で、ボディ・バックまでが近過ぎると共鳴しなくなりますし、距離があり過ぎても音が吸い取られて締まりのないサウンドになってしまう。その最適な状態を見つけるまでに、何度もプロトタイプを製作しました。そして最後に作ったプロト・ギターを弾いた時、これなら私も弾きたいと思えたのです。

ブライアン とにかく試してみることが重要なのです。ティムが良い結果を得るまで何度も試したという事実、それが発明の精神なのです。もちろんうまくいかない時もありますが、とにかく試してみる。今までなかったものを作り上げるのは困難もたくさんあります。でも、アイディアを見つけて満足できる結果を得るまで止まることはしません。私たちはそのプロセスが好きなのです。

ティム 開発した本人がそのギターを手にして“もっと弾いていたい”という気持ちが湧くのであれば、みんなに受け入れられるギターができた証だと思います。弾きたいという気持ちを引き起こしてくれるもの、それができるまで開発を続けるのです。

──Acoustasonicはボディの滑らかな加工が非常に大変なのでは? 特にStratocasterはカッタウェイも深く、その工程は複雑なものだと思うのですが。

ブライアン その答えもまた、私たちのグランドファザー、レオ・フェンダーに由来しますね。生来フェンダーの楽器は生産がしやすい設計なのです。伝統的なStratocasterやTelecasterだってそうですよね。十分に生産できて、人々の手に渡り音楽が楽しめるように、レオは工程の効率も考慮したうえでデザインを考えた。複雑な工程をシンプルにするというアートなのです。私たちの設計が終了すると次の過程は生産工場へと渡ります。私も元々はファクトリー出身の人間ですが、製造機器に詳しいファクトリーのスタッフがもうひとり加わり、我々はバンドメンバーになったかのようにお互いのパートを助け合い、生産工程を定めていきました。

ティム Acoustasonic Telecasterが完成していたので、今回Stratocasterへ派生することは比較的容易だったといえるでしょう。ボディシェイプのカット方法も把握しているし、モンダイナイ! 新しいものを作る時は最初の一歩が大変ですが、基本の概念が確立できていればそれを別の形態へ展開していけるのです。

──ノブの形状もストラトキャスターならではの感じが出ています。しかも木製で質感も素晴らしい!

ブライアン トラディショナルなStratocasterのノブと同じ形状で、これはエボニーでできています。Acoustasonic Telecasterもエボニーで作られた一般的なTelecasterのノブと同じ形状のものが付いていますが、それは私の友人の1人がデザインしたものなのです。去年の夏、彼がFenderの工場を訪問した際、Acoustasonic Stratocasterは開発の過程でした。彼から“新しい製品を開発しているのかい?” と聞かれたので私はそうだと伝えると、“じゃあ、ストラトのノブをいくつか送ってくれ” と言われたのです。そして後日、ストラト用のプラスティック・ノブをいくつか彼に送り、その後に彼から送られてきたのがこのエボニー・ノブでした。私は感激して、これをぜひ使わせてほしいと言ったのです。ですから、Acoustasonicに搭載されているエボニー・ノブは私の友人によるデザインが始まりなのです。

フェンダーのギターをプラグインすれば良い音が出る、このギターもそうです

──ほかにもテレキャスターとストラトキャスターで変えた部分について、その目的とサウンドの特徴を教えて下さい。

ティム ボディのレゾナンスを最大化する為にサウンドポートの設計も変えています。“ドーナツの高さ”と呼んでいるのですが、Stratocasterのほうがサウンドポート表面からボディ・バックまでの距離が短いのです。TelecasterよりもStratocasterのほうがボディの外郭は大きいのですが、ボディ裏のコンター加工やカッタウェイ部により、共鳴に寄与する木材表面の有効面積はTelecasterより小さい。それを補うための技術を持って、完成させたのです。

ブライアン このギターはいろんな技術が含まれているのに、見た目がシンプルですよね? 構造的な仕様について好奇心のある方もいますが、ほとんどの方がシンプルに良いギターをプレイしたいと思っています。それで意図的にシンプルな見た目にしました。構造や詳細はこの美しいギターの中に隠れています。それよりも、手に取って簡単にプレイできて、ノブを回して好きなサウンドを探して演奏できる。何かの設定で、数字を入力したりプログラムを切り替えたりなんて考えていたら、弾いていて楽しくない。手に取って楽しいと思わせる、弾きたいと思わせるギターにしたかったのです。フェンダーのギターをプラグインすれば良い音がする、このギターもそうですよね。どんな設定だろうと使える音ばかりなのです。

ティム 開発中に気づかされたのは、“どこがどの設定で……”なんて見ながら演奏するより、自由に設定を直感的に変えて音楽的に使いこなすことができるのが重要だということなんです。ブライアンがラリー・フィッシュマンに多くのコントロールは付けたくない希望を伝えたところ、ラリーは“ノブはふたつ? それだけ?”という反応でした。ふたつのノブにスイッチひとつでこの幅広いサウンドを実現したのです。曲の最初はアコースティックで演奏し、ソロの場面で切り替えて完璧なエレクトリック・ソロを弾くこともできる。どんな状況でも即座に対応できるのです。フェンダー・アンプの美学として、ノブがどの部分だろうが良い音しか出ない設計になっていますが、このギターも使えない音なんて入っていません。もし仮にあなたがライブに機材を忘れても、この1本があればいろんな対応がでできる。手元でサウンドを選ぶだけで、すぐに適応できると思いますよ。

──最後に、日本のFENDER LOVERに向けてメッセージをお願いします。

ブライアン 世界中どこのギタープレイヤーも同じ気持ちを持っています。私はその事実が好きなんです。みんな違う言語を話しますし、文化も違いますが、ギターを手にすればすぐにThe Beatlesの曲をプレイしたり、Led Zeppelinをプレイしたりします。それがLoudnessだったりもする。音楽は世界の共通言語なんです。普通だったら他人のままですが、“音楽をプレイしている”という共通点があるだけで長い付き合いの友達になれる。ギターを弾いているキッズはすべてつながりを持てるのです。もはやみんな同じバンドのメンバーといっても良いでしょうね(笑)。なので、私からのメッセージは、“音楽を演奏しましょう!”ということですね。Acoustasonic Stratocasterがあれば音楽をプレイできるのです。ケーブルを差し、ボリューム上げて、ロックしましょう!

ティム Acoustasonicシリーズは新しいフィーリング、新しいサウンドを持ち込んでくれるでしょう。PAを通してだったり、コンピューターを通して、ギターアンプを通して、恐れずにいろいろな方法を試してみて下さい。このギターはさまざまな状況へ適応できる“声”を備えているのですから。

ブライアン それはとても重要なことです。このギターは、“こうしなきゃいけない”なんてルールはありません。私はYouTubeで演奏動画を見るのが好きなのですが、ボディを叩いて演奏したり、ルーパーをつないだり、シンプルにつま弾く人もいます。ぜひ新しいことをAcoustasonic Stratocaster、Telecasterで試してみてほしいですね。

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Fender / American Acoustasonic Stratocaster

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 https://fender.co.jp
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