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PCいらずのギター録音

  • 制作:ギター・マガジン 撮影:八島崇 文:編集部

生まれたアイディアを逃さず、もっと手早く気軽にギターを録音したい!という人に向け、ここではパソコンを使わずにレコーディングできる機材たちを紹介。録音までの簡単な手順も掲載したので参考にしてほしい。

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録音&再生が1台で完結
マルチトラック・レコーダー

複数の楽器や演奏を個別に録音し、それぞれの音量や音質を調整したうえでステレオ・ファイルへとミックスできる機能を持ったマルチトラック・レコーダー(MTR)。パソコンが主流となった今でも、直感的に手で操作できるハードウェアMTRの魅力は衰えていない。ここでは現代的な機能を持ったMTR2機種を紹介しよう。

ZOOM R20

現代に必要なDAW機能が集約された最新鋭のマルチトラック・レコーダー

ZOOM R20

価格:オープン・プライス(市場予想価格49,000円前後)
問合せ:ズーム カスタマーサポートセンター ☎︎0570-078-206 https://zoomcorp.com/ja/jp/
ZOOM R20 製品情報

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Overview

 R8やR16、R24という今も愛用され続けるハードウェアMTRを開発したZOOM。前モデルから10年以上の時を経て、同社が2021年にリリースしたのがこのR20だ。

 R20は4.3インチのタッチ・スクリーンを搭載しており、スマートフォン・アプリのような操作感覚で快適なレコーディングが行なえる。8ch同時録音、16ch同時再生が可能で、スクリーン上で録音データ(リージョン)を指で移動したり、分割編集やコピー&ペースト、削除といったDAWさながらの操作が可能だ。タッチ・スクリーンを搭載した分、トップ・パネルの操作子はシンプルにまとまっており、MTRに慣れていない世代や録音初心者もスムーズにレコーディングが行なえるだろう。パソコンやiOSデバイスと接続し、8イン/4アウトまたは2イン/2アウトのオーディオI/Oとして使用することも可能だ。

 入力はマイク、ライン、ギター/ベースに対応。ギターを直接入力する以外にも、アンプ前にマイクを立てて録音することもできる。特徴の1つが、同社のギター/ベース用マルチ・エフェクターの機能が内蔵されていること。3つのエフェクトを組み合わせたパッチが多数収録されており、エフェクトにはアンプ・シミュレーターなども含まれている。R20だけで音作りを完結できるのは、ギタリストにとって嬉しいポイントだ。

 また、多彩なドラム・ループを揃えるほか、シンセ音源まで内蔵。ピアノ・ロール画面でフレーズを打ち込んだり、接続したMIDIキーボードで演奏することも可能だ。現代の音楽制作にもマッチする最新鋭のMTRになっている。

How To Use

step 1:新規プロジェクトを作成する

まずは録音していく先となる“プロジェクト”を作成しよう。まっさらな状態で始めてもよいが、R20には音楽ジャンルに合わせたテンプレートが複数用意されている。例えばHipHopを選ぶとドラムのループが張り付けられた状態でプロジェクトが開くので、スムーズに録音を進めていくことができるだろう。録音を行なったプロジェクトはSDカードへ保存され、最大1,000のプロジェクトのセーブが可能だ(SDカードの容量による)。

step 2:ギターの音作り

ギターを直接入力する場合はINPUT 1へケーブルを接続し、Hi-Zボタンをオンにしよう。入力レベルはGAINノブで調整し、大きな音量を出した時にPEAKランプが点灯しないくらいにする。タッチ・スクリーン上でINPUT 1に該当するトラックのエフェクトを選べるので、そこから適用したいパッチを選択。パッチには3つのエフェクトが含まれており、必要であれば個別にパラメーターを調整する。

step 3:いざ、レコーディング!

各チャンネルのフェーダー上側にあるRECボタンをオンにして、タッチ・スクリーン下側にあるRECボタンを押せば録音がスタート。メトロノームも内蔵しており、録音開始前にクリックを鳴らすプリカウントにも対応する。Hi-Z入力に対応しているのはINPUT 1(トラック1)だけだが、録音したリージョンは別トラックへ移動できるので、そのままINPUT 1でどんどん録音し、サウンドを重ねていこう。

Next Step!:バック・トラックを作ろう

タッチ・スクリーンでトラックを選択し、トラック・タイプを“オーディオ”から“リズム“や“シンセ”に切り替えることで、そのトラックでリズム・ループの張り付けやシンセ音源の打ち込みが可能となる。リズム・ループは30種類のジャンルがあり、Intro/Verse/Bridge/Chorus/Outroのセクションがそれぞれに用意されている。シンセ音源はエレピやオルガン、ベース、ドラム・キットなど計19種類を使用可能だ。

ZOOM LiveTrak L-8

マルチトラック・レコーダー機能を持つ8ch仕様のデジタル・ミキサー

ZOOM LiveTrak L-8

価格:オープン・プライス(市場予想価格44,000円前後)
問合せ:ズーム カスタマーサポートセンター ☎︎0570-078-206 https://zoomcorp.com/ja/jp/
ZOOM LiveTrak L-8 製品情報

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Overview

 ZOOMのデジタル・ミキサー・シリーズ=LiveTrak。L-8は268(W)×282(D)×74mm(H)、1.56kgと小型かつ軽量ながら、8chの入力に対応したモデルだ。ACアダプターのほか、モバイル・バッテリーや単3電池×4本でも駆動するため、持ち運びも容易となっている。

 MTR機能も装備しており、各トラックの録音/再生が簡単に行なえる。デジタル・ミキサーながらおもな操作子はトップ・パネルに揃っているので、ディスプレイでメニューの階層をたどる必要もなく、直感的なコントロールが可能なのも嬉しい。各チャンネルの入力とマスターの計12trを同時録音可能で、一定のレベルを超えると録音をスタートするAUTO RECや、録音開始2秒前にさかのぼって記録するPRE REC、一部分の録音をやり直すパンチ・イン/アウト機能も備えている。録音データはSDカードに記録されるが、L-8は12イン/4アウトのUSBオーディオI/O機能も搭載しており、SDカード+パソコン(またはモバイル・デバイス)への同時録音も可能だ。

 ライブ配信やポッドキャストに向いた機能も搭載されている。6つあるサウンド・パッドには任意の音声データをアサインでき、ジングルや効果音を鳴らすといったことが可能。スマートフォンをTRRSケーブルで接続すれば、通話でゲスト参加する相手ともやり取りができ、発信者の音声が再度発信者へ戻ってしまうフィードバックを防止するミックス・マイナス機能も備えている。自宅でのギター録音だけでなく、バンドの練習やライブ、配信やポッドキャスト収録などでもぜひ使ってみてほしい。

How To Use

step 1:まずはギターを入力

ギターを直接入力する場合は、Hi-Zに対応するch1またはch2にケーブルを挿そう。Hi-Zボタンをオンにすることを忘れずに。そのあとGAINノブで入力レベルを調整するが、大きな音量を出した時にGAINノブの下にあるSIGインジケーターが赤色に点灯しないようにする。各チャンネルにはREC/PLAYボタンが備わっており、録音したいトラックはこのボタンを押して赤色に点灯させておこう(緑色は録音データの再生モード)。

step 2:録音準備

入力チャンネルの設定ができたら、トップ・パネル右側の操作へと移る。L-8はMIXER/EFFECT/SCENE/RECORDERという4つのボタンを切り替えることで、その上にある8つのボタンの機能が変化する。RECORDERを選択し、●ボタンを押して待機状態にしたあと、▶︎ボタンを押せば録音がスタート。すでに録音したデータに上書きをする場合はOVERDUBボタンを点灯させよう。

step 3:サウンドの調整

録音した各トラックは、CHANNEL STRIPで再生時の音質を調整できる。HIGH/MID/LOWの3バンドEQとLOW CUT、パン、エフェクト・チャンネルへのセンド量をコントロール可能だ。エフェクトはリバーブやディレイが8種類あり、その中から1つを選択して各チャンネルへ適用することができる。かかり具合はセンド量をコントロールするEFXノブとエフェクト・チャンネルのフェーダー(EFX RTN)で調整。各チャンネルを調整できたらREC/PLAYボタンを押して緑色に点灯させ、MASTERチャンネルのREC/PLAYを赤色に点灯させて録音すれば、ステレオ・ファイルにミックス・ダウンが行なえる。

Next Step!:バンドでも使ってみよう!

MTR機能を使って自身の演奏を録音するだけでもよいが、バンドなど複数人での演奏時にミキサー+MTRとして使うのもオススメ。L-8には4系統のヘッドフォン・アウトがあり、4人の演奏者へモニター回線を送ることが可能だ。しかもモニター・ミックスはマスターのほかA/B/Cの3系統を用意できるため、演奏者ごとに違ったモニター・バランスを作ることができるのも魅力。ミキサーの設定を7パターン保存できるSCENE機能も搭載しているので、バンドやライブ現場ごとに設定を作っておくこともできる。

スマートフォン&タブレットで使える
オーディオ・インターフェース

マイクや楽器のアナログ信号を変換してパソコンへ取り込めるようにするオーディオ・インターフェース(オーディオI/O)。近年はスマートフォンやタブレットなどのモバイル・デバイスへ接続できるモデルも増えてきた。モバイル・デバイスとオーディオI/Oの組み合わせは、まさに持ち運べるプライベート・スタジオ。いつでもどこでもギターを録音できるようになる。

ROLAND GO:MIXER PRO-X

ギター以外の多彩なソースにも対応する11ch入力のオーディオ・ミキサー

ROLAND GO:MIXER PRO-X

価格:オープン・プライス(市場予想価格19,000円前後)
問合せ:ローランド https://roland.cm/contact
ROLAND GO:MIXER PRO-X 製品情報

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Overview

 スマートフォンやタブレットでライブ配信や動画撮影を簡単に、かつ高音質で行なえるオーディオ・ミキサー。2017年から発売されているGO:MIXERシリーズの最新モデルだ。手のひらサイズながら最大7系統/11chの入力に対応。ギター/ベース入力のほか、48Vファンタム電源供給が可能なマイク入力、ステレオ楽器入力、ステレオ・ミニのライン入力×2系統、ヘッドセット入出力、スマートフォン入出力が用意されている。それぞれの入力のレベルはトップ・パネルのノブでコントロール可能。どの入力にあたるノブなのかアイコンが描かれているのでわかりやすい。

 本体上部にはスマートフォンを立てかけられる溝があり、アプリ画面を見ながらの操作や、カメラを使ってライブ配信や撮影が行ないやすいようになっているのもポイントだ。モバイル・デバイスの出力音をGO:MIXERの入力に戻すことができるループバック機能も搭載しており、アプリの再生音やバック・トラックなどを配信に乗せたり、自身の演奏と一緒に録音することができる。

 RolandからはZenbeatsやZentrackerといった楽曲制作アプリもリリースされているので、それらと組み合わせてオリジナル曲を作ってみるのもよいだろう。また、同社の画面分割アプリ4xCameraを使った動画撮影やYouTube、TikTok、Instagramといったプラットフォームでのライブ配信など、様々なシーンで使えるオーディオ・ミキサーになっている。

 電源は接続したモバイル・デバイスから供給されるほか、単4電池×4本で4時間以上の駆動が可能だ。

How To Use

step 1:モバイル・デバイスと接続

GO:MIXER PRO-Xとモバイル・デバイス(iOS/Android)は、付属のUSB Type-C to USB(microB)またはLightning to USB(microB)ケーブル、もしくはTRRSミニ・ケーブルで接続する。USB接続では、モバイル・デバイスからGO:MIXER PRO-Xへ電源供給が行なわれるが、TRRSミニ・ケーブルでの接続やマイク入力の48Vファンタム電源供給をオンにする場合は単4電池×4本を入れてバッテリー駆動へ切り替えよう。

step 2:ギターをジャック・イン!

ギターを直接入力する時は、写真右側にあるGUITAR/BASSの入力端子へケーブルを挿す。アンプにマイクを立てる場合はXLR/フォーン・コンボ端子へ、ステレオ出力のエフェクターなどを使う場合はステレオ楽器入力のフォーン端子へ接続しよう。ギターがアクティブ・ピックアップなどで入力レベルが大きいようであれば、写真左側のPAD GUITAR/BASSのスイッチをオンに。これで入力レベルを下げることができる。

step 3:レベルを合わせて録音開始

ギターのアイコンが描かれたノブで入力レベルを調整する。大きな音量で弾いた時に、トップ・パネル右上部にあるPEAKメーターが一瞬光るくらいが理想的だ。点灯し続けるとレベル・オーバーとなって音が歪んでしまう。GO:MIXER PRO-Xではトップ・パネル下側中央のノブがマスター・ボリュームとなるので、ギターのノブと一緒にバランスを取ろう。あとはモバイル・デバイスでカメラ・アプリやボイスメモ・アプリなどを立ち上げればすぐ録音できる。

Next Step!:Zentrackerで本格レコーディング

RolandがリリースしているDAWアプリ、Zentrackerを使うことで本格的なレコーディングと編集が可能だ。制限なくオーディオ・トラックを作って録音できるだけでなく、リバースやストレッチ、16種類のエフェクト、200種類以上のループを使って楽曲制作を楽しめる。無料プランと有料のメンバーシップ・プランが用意されているので、まずは気軽に始めてみよう。打ち込みを使ったトラック制作もしたい人はZenbeatsという兄弟アプリがオススメ。もちろんiOSのGarageBandなどのアプリでもGO:MIXER PRO-Xを使うことができる。

IK Multimedia iRig HD 2

ギター/ベース録音に特化したコンパクトなオーディオI/O

IK Multimedia iRig HD 2

価格:オープン・プライス(市場予想価格18,480円前後)
問合せ:IK Multimedia https://www.ikmultimedia.com
IK Multimedia iRig HD 2 製品情報

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Overview

 IK Multimediaが展開するオーディオI/OシリーズのiRig。ボーカル向けやMIDIキーボード一体型、ペダル型など多数のモデルを揃えている。このiRig HD 2はギター/ベースに特化したオーディオI/Oで、前モデルのiRig HDと同じくシンプル操作で高音質の録音ができ、ギタリスト/ベーシストに長きにわたって愛用されているモデルだ。

 接続は付属するUSBケーブルで行ない、Mac/Windows/iOS/iPad OSに対応。電源アダプターなども不要で、接続したデバイスからの供給で駆動する。

 入出力端子はギター/ベース入力(フォーン)、アンプ出力(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)を搭載。ライン・レベルにも対応しているので、シンセサイザーやキーボードなどの楽器、ミキサーからの信号も入力することが可能だ。そのほか、本体にはゲインとヘッドフォン・アウトのボリューム調整ダイヤル、アンプ出力信号の切り替えスイッチ(THRU/FX)を備える。

 iRig HD 2にはアンプ・シミュレーター・ソフトのAmpliTube 5 SE for Mac/PCのほか、無料のAmpliTube CS for iOSを有償版同等にする特典も付属する。同社の優れたモデリング技術で再現された著名ギター/ベース・アンプやエフェクターをモバイル・デバイス上で使用することが可能だ。

 本体の重量は51gと軽量で、付属のマジック・テープ&クリップを使うことで、マイク・スタンドなどへ取り付けることが可能。自宅だけでなくライブ・ステージでの活用も積極的にしていきたいオーディオI/Oだ。

How To Use

step 1:iPhoneまたはiPadと接続

iRig HD 2が対応するモバイル・デバイスはiPhoneまたはiPad。デバイスの端子に合わせてLightningかUSB-Cで接続しよう。iRig HD 2は低電力で駆動するので、iPhoneからの電源供給でも使用できる。ギターは、ギター・アイコンが描かれた入力端子に接続。ハイ・インピーダンスが標準となっているので、Hi-Z切り替えなどは必要ない。モニターする際は、ヘッドフォン・アウトにスピーカーやイアフォン、ヘッドフォンをつなごう。

step 2:LEDの色で入力レベルを判断

ギターの入力レベルは、本体側面にあるGAINダイヤルで調整。大きい音量で弾いた時にLEDが青と緑で点滅する、または緑に点灯している場合はGAINダイヤルを出力端子側へ回し、入力レベルを上げる必要がある。LEDが赤に点灯する場合は入力レベルが大きいため、反対にGAINダイヤルを回そう。LEDが緑とオレンジで点滅すると適正な入力レベルになっている。

step 3:AmpliTubeを使ってみよう

Step②で録音準備は整っているので、録音できるアプリを使えばレコーディングが可能だ。しかし、ギタリストにオススメしたいのは付属する同社のアンプ・シミュレーター・アプリ、AmpliTube for iOS。AmpliTube for iOSは高度なモデリングで再現されたギター/ベース・アンプやエフェクターを収録するだけでなく、DAW機能も搭載しており、実機アンプを使っているような本格的なサウンドメイクからマルチトラック・レコーディングまで行なえてしまう。iRig HD 2ユーザー登録者は、無料のAmpliTube CSで機能のアンロックが可能。17種のストンプ、8種のアンプ、10種のキャビネット、2種のマイク、Loop DrummerのRock Pack、2trレコーダーが追加され、有償版同等の機能が使えるようになる。その他、アプリ内課金ではルーパー機能、メサ・ブギーやOrange、フェンダーといったメーカー公認ギア・モデルのほか、ジミ・ヘンドリックス、ブライアン・メイなどのシグネチャー・モデルのアンプやエフェクトを追加可能だ。

Next Step!:ライブ・ステージで使いこなす

ギター入力端子の隣の出力端子からアンプへ接続すれば、AmpliTube for iOSのサウンドをアンプから出すことができる。つまり、AmpliTube for iOSに搭載された様々なエフェクターを使ってライブが行なえるわけだ。同社のワイヤレスMIDIペダル・ボード、iRig BlueBoardを組み合わせることで、エフェクターのオン/オフも足下で操作できるようになる。また、iRig HD 2のTHRU/FXスイッチをTHRUにすると、モバイル・デバイスを介さないドライ音がアンプ側へ送られる。録音アプリを使いながらお気に入りの実機アンプを鳴らす、といった使い方も可能だ。

ZOOM AMS-24

録音/配信モードを備えたわずか180gの2イン/4アウト仕様

ZOOM AMS-24

価格:オープン・プライス(市場予想価格15,000円前後)
問合せ:ズーム カスタマーサポートセンター ☎︎0570-078-206 https://zoomcorp.com/ja/jp/
ZOOM AMS-24 製品情報

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Overview

 “レコーディングとライブ配信を、かつてないほど簡単に”をキーワードに、ZOOMが新しく開発したAMSシリーズ。このAMS-24は2イン/4アウト仕様のモデルだ。接続したパソコンやモバイル・デバイスからの電源供給のほか、ACアダプター、単3電池×2本で駆動。電池を含めても180gという軽量さが魅力となっている。ポケットにすっぽりと入ってしまうので、どこにでも持ち運んでレコーディングが行なえるだろう。

 入力はXLR/フォーン端子が2系統あり、ステレオ・リンク・スイッチを押すことで2系統がL/Rにアサインされてステレオ入力となる。ギターと歌など以外にも、ステレオ出力のエフェクターなど、幅広いシチュエーションで使用できるだろう。さらには48Vファンタム電源を備えているので、コンデンサー・マイクを使ってアンプ録りをするといったことも可能だ。

 また、小型の筐体ながら豊富な出力を用意している。モニター・スピーカーなどを接続できるメイン・アウトのフォーンL/Rのほか、独立したヘッドフォン・アウト×2系統を装備。録音時にはギタリストとボーカルがそれぞれ違ったモニター・バランスをヘッドフォンで聴きながら録音することができる。

 また、配信で便利なSTREAMINGモード(後述)やループバック機能も装備。ループバックは接続したデバイス上のサウンドをAMS-24の入力音とミックスできる機能だ。バック・トラックを流しながら演奏した音を録音したり、YouTubeやInstagram、TikTokなどのプラットフォームでライブ演奏を配信する時にも使えるだろう。

How To Use

step 1:外部電源または電池で動作させる

AMS-24はiOSとAndroidデバイスの両方に対応している。接続はUSBケーブルで接続。USB端子が2系統備わっているが、写真右側がデバイスとの接続用、左側は外部からの電源供給用だ。モバイル・デバイスと接続する場合は、先に外部電源または単3電池×2本をセットしてから行なおう。Lightning端子のAppleデバイスとの接続にはLightning -USB 3カメラアダプタを使った変換が必要なので注意。

step 2:ギターを接続してレベルを調整

ギターを直接接続するにはインプット1を使う。また、写真左上部にあるスイッチをGUITARにしてHi-Z入力に切り替えよう。アクティブ・ピックアップのギター、エフェクターやバッファーを通してロー・インピーダンスになっている信号はMIC/LINEで問題ない。入力レベルはダイヤルで設定する。大きい音量時にSIGが赤く点灯しないようにしよう。

step 3:ダイレクト・モニターで快適な演奏を!

モニター音はモバイル・デバイスのアプリから戻ってきたサウンドであり、DAWアプリを開いてギターを弾いてみると若干音が遅れて聴こえる場合がある。これは“レイテンシー”と呼ばれるもので、ギターの信号がオーディオI/Oを通ってデバイスに入り、アプリ上でエフェクトなど音の処理をしたあと、再度オーディオI/Oを通って戻る中で、どうしても発生してしまう音の遅れだ。自分の演奏と聴こえてくる音にズレがあると、上手く弾けないという人もいるだろう。そんな時はDIRECT MONITORスイッチをオンにすると、AMS-24に入力された音をそのままヘッドフォンなどで聴くことができるため、レイテンシーがなくなる。

Next Step!:STREAMINGモードでライブ配信

AMS-24の注目ポイントとして、MUSIC/STREAMINGモードが挙げられる(OUTPUT Aダイヤルの上部にあるスイッチ)。MUSICは通常のオーディオI/Oと同様、2系統の入力をマルチトラック・レコーディングできるモード。STREAMINGは、YouTubeやInstagram、TikTokなどのプラットフォームを使ったライブ・ストリーミングでの活用を目的としたもので、2系統の入力をミックスして配信できるモードだ。プラットフォームによっては1系統の入力しか使えない場合もあるが、このSTREAMINGモードを使うことで歌とギターなど2つの入力をステレオ・ミックスして配信を行なうことができる。

XSONIC XTONE

3つのフット・スイッチを持つギタリストが使いやすいペダル型

XSONIC XTONE

価格:オープン・プライス(市場予想価格 18,150円前後)
問合せ:フックアップ ☎︎03-6240-1213 https://www.hookup.co.jp
XSONIC XTONE 製品情報

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Overview

 一見するとペダル・エフェクトのようなXTONE。その正体は1イン/2アウトのオーディオI/Oだ。本体のコントロールは3つのフット・スイッチと大きなボリューム・ノブのみとシンプルな仕様。音声入力はギター/ベース/キーボード用のフォーン端子が1系統と、楽器奏者に向けたオーディオI/Oになっている。出力は豊富にあり、ライン・アウト(フォーンL/R)のほか、バランス・アウト(XLR)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)を用意。また、エクスプレッション・ペダル用入力も備えている。

 Mac/Windows/iOS/Androidに対応し、電源は接続したデバイスから供給されるため、ACアダプターなどを別途用意する必要がない。スタジオやライブ・ステージに持ち込む際に電源の配線を気にせず使えるのはメリットだ。

 3つのフット・スイッチはMIDIコントローラーとして動作する。DAWやエフェクト・アプリなどがMIDIでのコントロールに対応している場合、このフット・スイッチでアプリ内の機能を操作可能だ。エフェクターのオン/オフやパッチの切り替えなど、ギタリストに馴染みある操作性でXTONEとアプリを扱える。

 USBで接続したモバイル・デバイス上に演奏を録音する用途としてはもちろん、豊富な出力を使ってライブでも活躍できる。エフェクト・アプリを組み合わせてXTONEをマルチ・エフェクト・ペダルのように使ったり、アンプ/キャビネット・シミュレーター・アプリで音を作り、バランス・アウトからミキサーへ接続するということも考えられるだろう。

How To Use

step 1:XTONEとデバイスを接続

iOSとAndroidデバイスの両方に対応しており、接続はUSBケーブルで行なう。Lightning端子のAppleデバイスとの接続にはUSBからLightningへの変換が必要だが、そのアダプターも付属しているので安心だ。電源はモバイル・デバイスより供給されるので、配線はシンプルにまとまる。

step 2:あとはギターを接続するのみ!

ギターは本体右側のインプットへ接続。XTONEはギター/ベース向けに開発されており、ハイ・インピーダンス入力に標準で対応している。ボリューム・ノブは出力レベル用となっていて、入力レベルは設定の必要がない。モニターはヘッドフォン・アウトかライン・アウト、バランス・アウトの出力から行なえる。あとは録音ができるアプリでレコーディングをしてみよう。

step 3:エクスプレッション・ペダルをつないでみよう

XTONEの強みは、オーディオI/Oながら3つのフット・スイッチを備えること。レコーディング時にもぜひ生かしたい機能だ。XTONEのMIDIコントロール・モードは3種類あり、それぞれで対応アプリが用意されている。Positive Grid JamUpやBIAS FX、IK Mulitimedia Amplitube for iOS、Yonac ToneStack、Agile Partners AmpKit+などでフット・スイッチを使用可能だ。そのほかのアプリでも、MIDIでのコントロール(MIDI CC)に対応していればXTONEで操作することができる。また、EXP端子にエクスプレッション・ペダルを接続することで、アプリ内のボリューム・ペダルやワウなどをコントロール可能だ。

Next Step!:フット・スイッチ使いこなし術

モバイル・デバイスとXTONEをマルチ・エフェクターのように使うことは紹介したが、さらにレコーディングで活用できるフット・スイッチ・テクニックを解説しよう。レコーディング・アプリによっては、録音や再生などのトランスポート操作をMIDIでコントロールできることがある。3つのフット・スイッチはそれぞれにMIDI CCナンバーという番号があり、そのMIDI CCをトランスポートに割り当てることで、フット・スイッチ操作で録音/再生などが可能だ。MIDI CCの割り当てはアプリによって違うので、説明書などを確認してみてほしい。

これで解決! レコーディング用語集

レコーディング機材やそのパラメーター名は見慣れないものも多く、録音について学ぼうとWebサイトや本を調べても用語がわからない……という経験をした人も多いのではないだろうか。最後に、ギター録音に関わるレコーディング用語を解説したので参考にしてみてほしい。

DAW

 Digital Audio Workstationの略称で、歌や楽器の録音、MIDIの打ち込み、最終的なミックス・ダウンといった音楽制作作業を行なえるソフトウェア。パソコンで動作するものが多いが、近年はモバイル・デバイス用のDAWアプリもリリースされている。DAWには“トラック”というスペースがあり、そこで録音や打ち込みが可能だ。トラックにはオーディオ・トラックやインストゥルメント・トラックなどの種類があり、前者が歌や楽器演奏の音声データを記録するトラック、後者がソフトウェア音源などを使って“ピアノ・ロール”と呼ばれる画面で打ち込みをするトラックとなっている。“ミックス・ダウン”は、各トラックで音質や音量、音の位置(パン)を調整して、1つのマスターに落とし込む作業。“トラック・ダウン”とも呼ぶ。

オーディオ・インターフェース

 パソコンやモバイル・デバイスと接続し、楽器など音の入力や接続先デバイス内のサウンド出力を可能とする機材。オーディオI/O(イン/アウトのこと)と呼ぶこともある。ギターの出力は電圧で表わされるアナログ信号であり、そのままではデジタル信号を扱うパソコンなどに取り込むことができない。オーディオI/Oにはアナログ信号をデジタル信号へ変換するADコンバーター(Analog to Digital)が搭載されており、ギターで弾いた音をパソコンへ記録することができるようになる。また、その逆であるDAコンバーター(Digital to Analog)も備え、パソコンからの音をヘッドフォンやスピーカーから出力して聴けるようにもなっている。オーディオI/OによってAD/DAコンバーターの特性が違い、出音にも変化がある。

ゲイン

 入力レベルのこと。機材にはGAINやINPUTという名称で調整ノブが備わっていることが多い。ゲインというとギター・アンプでは“歪みを作るパラメーター”という印象が強いが、録音におけるゲイン調整では“歪む=音がつぶれてダイナミクスが失われる”ということになるので、歪まない程度に音量を稼ぐことが重要となる。調整時には、機材のPEAKメーターやDAWなどのソフトウェア上でメーターを確認しながら、大きな音量で演奏した時に0dBを越えないようにしよう。入力レベルが低く、録音された音量が小さいと、あとから音量調整する際にノイズまでボリュームが上がってしまう。録音時の音量をできるだけ上げておくことでノイズとのレベル差(SN比)が生まれ、あとから音量を上げた時にもノイズが目立ちにくくなる。

チャンネル

 信号経路を数える際の単位。2イン/2アウトのオーディオI/Oは、2つの信号を個別に入力/出力できる。複数のチャンネルがある場合、それぞれの信号入力箇所をch1やINPUT 1などと表わすことが多い。基本的にギターを録音する時は1chで十分だが、アンプ録りでマイクを複数本立てる、エフェクターを通した音と何も通さないドライ音に信号を分岐させて録音する場合などは2ch以上ある製品を使うとよいだろう。マイクや楽器はおもにXLRやフォーン端子のケーブルで入力する。フォーン端子はTRSやTS、TRRSなどのバリエーションがあり、ギター・ケーブルはTSフォーン端子だ。XLRとフォーンの入力端子が別々に付いている製品もあれば、XLR/フォーン・コンボというどちらも挿せる端子が備わっているものもある。

Hi-Z

 インピーダンスが高いこと(ハイ・インピーダンス)。電気信号によってインピーダンス(交流抵抗)の数値が違うが、オーディオ機器では入力と出力のインピーダンスをマッチさせることが理想的だ。一般的にギターの信号はインピーダンスがかなり高く、そのままオーディオI/Oなどへ入力してしまうとインピーダンスがマッチせず、音が細くなるなどの変化が起きてしまう。そのため、Hi-Z対応の入力端子に接続することが望ましい。多くのオーディオI/OではHi-Zスイッチをオンにすることで、入力端子のインピーダンスが変化するようになっている。ちなみに、出力インピーダンスの低いエフェクターやバッファーを介したり、アクティブ・ピックアップ搭載ギターの場合、ギター信号はロー・インピーダンスとなるため入力部をHi-Zに切り替える必要はない。

ファンタム電源

 マイク・ケーブルを通じてマイクへ電源供給を行なう装置。マイクはおもにダイナミック型かコンデンサー型に分けられ、ダイナミック型の場合はそのままオーディオI/OやMTRに接続すれば使えるが、コンデンサー型の場合はマイクへ電源供給をしなければ動作しない。多くのコンデンサー・マイクは48Vの電源供給で駆動し、オーディオI/Oなどへ搭載されているファンタム電源もほとんどが48Vだ。電源供給時は入力チャンネルに備わっているファンタム電源のスイッチをオンにすることが多い。製品によっては、ファンタム電源のスイッチをオンにすることで全チャンネルに電源供給されてしまうことがあり、ファンタム電源を必要としないマイクなどを別チャンネルにつないでいると故障の原因にもなるので注意しよう。

ギター・マガジン2022年9月号 発売中!

220913_guitar_rec_32.jpg 本記事はギター・マガジン2022年9月号にも掲載されています。この号の表紙特集はジョニー・デップとの共作『18』をリリースしたジェフ・ベック!



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