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ディバイザー大商談会2023レポート

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ディバイザーが毎年春に行なっている“ディバイザー大商談会”。全国の販売店やユーザーに向けて、ディバイザーが擁する各ブランドの新製品がお披露目されるイベントだ。8回目となる今年の大商談会は、5月23日にディバイザーの公式HP上で特設ページが公開され、著名ギタリストによる試奏動画や3D写真など、多角的にディバイザーのギター/ベースをチェックできるようになっている。今回、ギター・マガジン編集部はディバイザーの本社へ向かい、大商談会で出展される製品や製作を行なっている工場の様子の取材を敢行した。本記事では大商談会のイベント・スペースの模様をレポートする。また、7月13日発売のギター・マガジン2023年8月号では、ディバイザー製品が製作される飛鳥工場の様子を紹介するので、そちらも併せてチェックしてほしい。

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150本を超えるギター/ベース/ウクレレの新作

 長野県松本市を拠点に、日本だけでなく世界へ良質なギター/ベース/ウクレレを送り出しているディバイザー。今年の大商談会では150点以上の新製品を取り揃え、それぞれの魅力を特設ページ上で余すことなく伝えている。それらの新製品群がディスプレイされているのが、ディバイザー本社にあるスペース。各ブランドやシリーズごとに区分けされており、360度を多彩な杢や塗装のギター/ベースに囲まれた空間に圧倒される。

大商談会で出展するエレキ・ギター/ベースが並べられた空間。

 スペースの中央には、厳選された木材や仕様を採用し、職人主導で製作を行なうワンオフ・モデルであるプレミアム・コレクションや、大商談会限定製品を中心としたギターが並んでいた。展示されていたモデルの一部を紹介していこう。

この台に展示されているのは、希少な木材や塗装方法を用い、こだわり抜かれたスペックで製作された“1点もの”のギターたちだ。

 中央にあるMT-Stabilized Custom/Jは、Momoseの大商談会限定モデルとして制作された1本だ。スタビライズド・ウッドと呼ばれる材をボディ・トップに使用し、特殊な工程で樹脂を含浸させることで木材の内部まで色を入れ、複雑な色と杢目の組み合わせを実現している。ボディ中央部は明るく、外側に向かって水色を取り入れることで、満月に照らされた湖と羽ばたく青い鳥をモチーフにデザインしたとのこと。バール/フレイムの杢目を引き立たせる高度な着色技術が楽しめる1本だ。ボディ・バックには和材のフレイム・トチ、ネックと指板にハカランダを使っており、さらに指板には青い鳥のインレイも。大商談会限定モデルだからこそ誕生した、“アート”の域にも踏み込むギターだ。

 MT-Stabilized Custom/Jの左手前にあるのが、MC-MV-HOLLOW-Premium/FT #16456というMomoseプレミアム・コレクションのモデル。ボディ材には和材のトチを使用している。トチはうねったような独自の杢目を持った木材で、音はクセが少なく乾いたサウンド。中域から高域にかけて広がる澄んだ音色が特徴だ。歪みのノリも良く、ハードな音楽でも味のあるトーンを生み出せる。このギターでは特に杢目の美しいフレイム・トチをボディ・トップに採用。青緑色のグラデーションで仕上げられ、波打つ杢目を隅々まで楽しめるデザインだ。同じトチを使ったピックガードもポイント。ネックと指板にはフレイム・メイプルが使われている。

 この中央のスペース以外にも、大商談会スペースの奥側の壁一面にはプレミアム・コレクションのギターが多数並んでおり、壮観な光景だった。それぞれがこの大商談会に合わせ、木材から全体の仕様、パーツ、塗装に至るまで職人がこだわって製作した、巧緻を極めた1本となっている。各モデルの詳細は、大商談会特設ページのプレミアム・コレクションのコーナーから確認してほしい。

壁一面に飾られたプレミアム・コレクションのギター。キルト杢の梻(タモ)や黒柿(クロガキ)などの和材を中心に使用し、木材に合わせたカラーリングが施されている。

こちらもプレミアム・コレクションの一部だ。

ディバイザーが誇る希少な和材を使ったギター

ブルー・バーストに塗装された栃(トチ)を使ったギター。

 Momoseのラインナップには、見た目も美しい和材を使ったギターが揃っている。

 トチを使用したモデルは波打つような独特な杢目を持ち、その見た目を活かすブルー・バーストのフィニッシュが施されている。抜けの良い中域とハリのあるトーンが特徴だ。このトチのシリーズには、STタイプのMC-TOCHI SP’23/NJやTLタイプのMT-TOCHI SP’23/NJ、JMタイプのMJM-TOCHI SP’23/NJといったギターのほか、機能性や演奏性を追求したModern Virtuoso Seriesとして、SSH配列のSTタイプやHSH配列のSTタイプ、HSH配列のTLタイプといったモデルもラインナップされている。

枝垂桜(シダレザクラ)を採用したギターは、ゴールドとブラックのパーツが映える。

 ディバイザーを象徴する和材、サクラを用いたMomoseのシリーズも用意されている。これらのモデルでは富士山麓の枝垂桜(シダレザクラ)を採用。スポルテッド風の杢目が美しいサクラ・ボディに、ブラックとゴールドのパーツを組み合わせ、上品さと高級感が同居したデザインとなっている。STタイプのMC-SHIDAREZAKURA SP’23/EやTLタイプのMT-SHIDAREZAKURA SP’23/Eのほか、JMタイプやJGタイプ、MGタイプと、多彩なモデルをラインナップしているのもポイントだ。

 そのほか、虫食いの被害に合った赤松を使ったモデルも製作されている。また、プレミアム・コレクションの中にはさらに希少な神代タモや屋久杉といった木材を使用したギターも存在。木材で選ぶ楽しみが多いのもディバイザー・ギターの魅力的だ。大商談会特設ページのMomoseコーナープレミアム・コレクションのコーナーをチェックしよう。

虫食い被害で倒木してしまった赤松をギターとして再生する“赤松ギタープロジェクト”の製品。

こちらもMomoseのモデル。和材ではないが、杢目が細かく浮き立つ“エキゾチック・メイプル”という希少な材を使ったシリーズになっている。

個性を追求する独創的な塗装を採用

Bacchusのモデル。手前の3本がG6-HLシリーズ、右奥の2本がDUKE-CTM、左奥の2本がT-MASTERだ。

 ビギナーからプロフェッショナルまで、幅広いユーザー層に支持されるBacchusからも魅力的なギターが登場している。ここでは、TLタイプにコンター加工や独自のハードウェアを採用し、優れたプレイアビリティを実現しているT-MASTERをピックアップしよう。今回の大商談会で出展されたT-MASTER SP’23/ZC AF-SLVT-MASTER SP’23/ZC AF-PNKは、共に額縁塗装(Antique Frame)と呼ばれる、西洋絵画の額縁に用いられる伝統的な手法を使った塗装が施されている。独自のテクスチャーは、個性を追い求めるギタリストにぴったりだろう。ボディはアルダー、ネックはメイプルで、指板には非常に硬質で比重が高いジリコテをチョイス。1弦側に切り込みを入れたオリジナル・ブリッジ、DTB-1もポイントになっている。

 そのほか、Bacchusからはマルチ・レイヤーの塗装がされたヘッドレスのG6-HLシリーズや、人気LPタイプの新作であるDUKE-CTMが登場している。大商談会特設ページのBacchusコーナーから各モデルをじっくり見ることが可能だ。

ホロウ・ボディが揃うSeventySevenのモデル。左手前の2本がALBATROSS-SHIDAREZAKURA、右手前の2本がSTORK-TOCHI、奥の3本がEXRUBATOだ。

 SeventySevenは、同社のアコギ・ブランドであるHeadwayの技術を継承して作られているジャズ・ギター・ブランド。そのSeventySevenにも和材を使った製品が取り揃えられている。

 まずはシダレザクラを使ったセミ・ホロウ・ボディのALBATROSSを紹介しよう。小ぶりなダブル・カッタウェイのボディは、夜桜を思わせるグラデーションのパープル・カラー、ブラックとゴールド・パーツで彩った。リア&フロントにハムバッカーを備えたALBATROSS-SHIDAREZAKURA HH-SP’23/Eと、P-90を備えたALBATROSS-SHIDAREZAKURA PP-SP’23/Eをラインナップしている。

 SeventySevenの中で高い人気を誇るのがセミ・ホロウのLPタイプ=STORK。しばらく生産終了となっていたが、今回の大商談会で再び登場した。ボディ上部のカッタウェイ付近やブリッジがマウントされるスタッド部周辺までもくり抜くオリジナルのホロウ構造で、約3kgの重量を実現。長時間のプレイでも疲れにくい演奏性を追求している。そのSTORKにトチを採用したのがSTORK-TOCHI HH-SP’23/NJSTORK-TOCHI PP-SP’23/NJ。ほかのトチ採用モデルと同じくブルー・バーストのカラーリングで、色の濃淡で杢目が際立っている。ポジション・マークはこれまでのSTORKから一新。指板材を削ってパーツを埋め込む構成で、ボディの杢目を活かすようなすっきりとしたデザインとなった。

 ほかにも、シェイプは往年のセミ・ホロウ・ボディながら内部の構造にこだわり、軽量化を実現しているEXRUBATOが3種類製作されている。大商談会特設ページのSeventySevenコーナーから確認してみてほしい。

コーヒーの木を使ったモデルも登場

イベント限定製作モデルのROSETTA VESSEL。神代タモやジリコテ、サクラ、屋久杉、コーヒー・ツリーといったこだわりの木材を使ったラインナップになっている。

 25インチ・スケールやセミ・ホロウ・ボディ、ハードテイル・ブリッジなどのユニークな仕様を盛り込み、イベント限定で製作されるのがDeviser Special Specification ROSETTA VESSELというモデルだ。今回の大商談会では、様々な材を用いたROSETTA VESSELがお披露目されている。

 1点もののプレミアム・コレクションとして製作されたROSETTA VESSEL-Premium/FS #376ROSETTA VESSEL-Premium/SO #377は、それぞれ極上のフレイム・サクラと、オーストラリア原産のシルキーオークをボディ・トップに用いたギター。サクラのモデルでは指板のインレイやサウンド・ホールにサクラのデザインが取り入れられ、深い色合いのボディを華やかに彩る。シルキーオークは家具や建材として古くから使われてきた木材で、その繊細な杢目をチェリー・サンバーストで仕上げている。

 アメリカ中東部原産のコーヒーの木をギター材として使ったのが、ROSETTA VESSEL・PP Coffee-CTM CLBROSETTA VESSEL・HH Coffee-CTM FBK。硬度がありながらも軽い木質で、レスポンスの速い軽やかなトーンが特徴となっている。カラーはCLB(カフェラテ・バースト)とFBK(深煎りブラック)の2種類。どちらもディバイザーのオリジナル・ピックアップを搭載しており、前者はフロント&リアにP-90タイプの“STP-1”、後者はハムバッカー“VH-1”を採用している。

 そのほか、神代タモやジリコテ、屋久杉、エキゾチック・サクラを使ったモデルも用意されている。各モデルは大商談会特設ページのROSETTA VESSELコーナーから見ることが可能だ。

 ここまで、大商談会で出展されたエレキ・ギターを紹介してきたが、もちろん同じスペースにはディバイザーが誇るエレキ・ベースも並べられていた。

ギターと同じく、和材や特別な仕様で製作されたベースも出展されている。

また、目を引いたのが楽器と共に飾られたワイン。ディバイザーが監修した長野産ワインは、毎年関係者へ送られている。

ディバイザー監修の長野産ワイン。

バックのイラストも美しいアコースティック・ギター

ビルダー百瀬恭夫氏が製作したVHF-280 CUSTOMシリーズ。鉄心のトラスロッドの代わりにエボニー・バーを採用した特別なギターだ。

 ディバイザー社内の別のスペースでは、アコースティック・ギターやウクレレを展示していた。まずはアコギ・ブランドのHeadwayから、“名工”百瀬恭夫氏製作のカスタム・モデルを紹介しよう。ボディ・トップはアディロンダック・スプルース、サイド&バックにはインディアンまたはブラジリアン・ローズウッド、ネックにホンジュラス・マホガニーを使用した3本をラインナップ。特筆すべきは、鉄心のトラスロッドではなく、百瀬氏が独自にアレンジしたエボニー・バーを採用したノン・アジャスタブル仕様ネックになっていることだろう。ネック自体がデリケートになるため管理がシビアになるという面はあるが、通常のアジャスタブル・ネックにはない深みのあるウッディなサウンドが得られる。

 ほかにも、カスタムショップ・ビルダーの安井雅人氏と降幡新氏が手がけるモデルやシダレザクラ、クロエゾマツ、コーヒー・ツリーといった木材を採用したモデルなどをラインナップ。どれもインレイやボディ・バックのデザインなど、ほかにはない独創性あふれるアコースティック・ギターになっている。詳しくは大商談会特設ページのHeadway ATB&STDのコーナーを見てみよう。

ビルダーの安井雅人氏が製作したY’s Concept(写真左)と、降幡新氏が手がけたF’s Concept(写真右&中央)。

クロエゾマツを使用したHD-531 DXモデル。

サクラを採用したアコギたち。上段は左から、夏桜、赤富士桜、青富士桜のモデルが並ぶ。下段の2本は、上位グレードの工法を受け継ぎながら優れたコスト・パフォーマンスを実現したスタンダード・シリーズ。

コーヒー・ツリーのアコギもラインナップ。カラーは、深入りブラック(下段)とカフェラテ・バースト(上段)を用意している。写真右側には、サクラ材のウクレレ・ブランド“SAKURA UKULELE”のモデルが並ぶ。

事務所と工場の連携が良い楽器を生む

ディバイザーの事務所外観。ここでは企画/営業のメンバーが仕事にあたっている。

 最後に、ディバイザーと飛鳥工場について少し紹介しておこう。自然豊かな山々を遠くに望む長野県松本市。松本駅から車で15分ほどの場所にディバイザーの本社がある。

 ディバイザーの事務所では、同社が手がける数多くのブランドのギター/ベース/ウクレレの企画や営業を行なっており、楽器製作は隣接する飛鳥工場の担当だ。他メーカーでは、企画/営業と別の場所にある工場で製作をしていたり、別会社に委託して作っている場合もある。しかし、ディバイザー製品は同じ場所でのワンストップ製作がメイン。企画/営業メンバーと職人が密に連携を取ることで、楽器店やユーザーの意見を取り入れるスピードも速くなるそうで、より良い楽器製作を目指せる環境になっていると言えるだろう。

事務所は今年改装され、ギター/ベース・メーカーらしいウッディな外観のオフィスとなっている。取材時には大商談会の準備が行なわれていた。

ディバイザーの事務所のすぐ隣にある飛鳥の工場。ここでディバイザーのギター/ベースが製作されている。

150本以上ものモデルが出展されたディバイザー大商談会。デジマート上でも続々と販売が開始されているので、自分にピッタリのギターを探し出そう!

またギター・マガジン2023年8月号では、これまでデジマート・マガジンで公開したディバイザーのインタビューのほか、大商談会出展モデルのカタログ、飛鳥工場のレポートを掲載する。こちらもぜひチェックしてほしい。

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