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TONE BENDER MKIII~OEMモデルも数多いビンテージ・ファズの名作 Part.1

SOLA SOUND、VOX/TONE BENDER MKIII PARK/FUZZ SOUND

古今東西の貴重な機材やそのリアルなサウンド、機材の使用法、サウンド・メイクのコツなどを動画とテキストでご紹介していくDEEPER’S VIEW〜経験と考察。第3回でゲルマニウムFUZZ FACE第5回でBIG MUFF Triangle V1と、ビンテージ・ファズの名機を取り上げてきましたが、今回はついに! TONE BENDER(トーン・ベンダー)をピックアップします。OEM製品も多く、その“ツリー”は複雑なことでも知られるトーン・ベンダーですが、今回はゲルマニウム・トランジスタを使用したSOLA SOUND、PARK(製品名はFUZZ SOUND)、VOXの3機種をご紹介したいと思います。基本的に同じ回路が使用されていながら、サウンドには各々の個性・違いがあります。さあ、奥深きTONE BENDERワールドをたどってみましょう。

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未だ謎の部分が多いビンテージ・ファズ
TONE BENDERファミリー

 「ファズ野郎」にとって避けては通れない道(ペダルね)の一つがTONE BENDER(トーン・ベンダー)であることは間違いありません。しかし、ほんの数年前まではごく一部のファズ・マニアしか知らなかった、極めてニッチな存在であったことも事実。特に日本では数名の超マニアの方がその歴史を綿密に調べ上げていただけで、ほとんどのペダル・コレクター、その道のプロである楽器店勤務者ですら、その歴史やラインナップを知る人はほとんど存在しなかったと言えるでしょう。昨今のインターネット情報の共有により、これまで知られていなかった、また謎だったことがどんどん解明していく中、未だに未知の領域が多いのがTONE BENDER周辺、そしてブリティッシュをはじめとするヨーロッパ/イタリア製のペダルです。現に、未だに見たこともない「TONE BENDER FAMILY」が発見されたり、超プレミアム・ペダルと「ほとんど同じ」回路のマイナーなペダルが発見され、新しいFAMILY TREEに名を連ねることもあったりするほどです。

 さらに、眉唾ものの逸話は多々あれど、明確なサウンド・サンプルや「証拠」が少ないのも特徴で、例えば「明らかにこの音はTONE BENDER MKIIだ」と論ずる場合、その証明となる画像、裏付け、記述がなければなりません。よって世界各国に存在するマニアたちは、日々その情報収取に余念がなく、これは皆さんが想像するよりも、はるかにディープで労力を要する作業なのです。インターネットに接続し「TONE BENDER」と打ち込んだだけで得られる情報は、全体の70%くらいかもしれません。残りの30%は実物を手にした者と、その繋がりのある人々にしか立ち入れない「聖域」なのです。冗談抜きで。もちろん、偉そうにこんなテキストを打ち込んでいる僕にしても、まだそこに片足を突っ込んだくらいの若造で、彼らの執念とも言えるその情報収集力と行動力にはいつも驚かされています。同時に、狂気をも感じるほどに⋯⋯。

 さて、そんな話はまぁ聞かなかったことにしていただいて(笑)、今回はTONE BENDERファミリーの中から割とライトな⋯⋯広く一般的に認知されているだろうと思われるTONE BENDER MKIIIをピックアップしてみました。

オフィシャルのTONE BENDERの系譜
SOLA SOUND / TONE BENDER(MKIII)

SOLA SOUND / TONE BENDER MKIII

 一般的にTONE BENDERと言えば、シルバー・ハンマー・フィニッシュの個体に黒いパネルのついた、JEN工場で製作されたVOX TONE BENDERをイメージする人が多いと思います。このJENのTONE BENDERは、TONE BENDERヒストリー的にはMK1.5というペダルの回路に近いデザインで、そのサウンドはFUZZ FACEとTONE BENDER MK1.5を足して2で割って、さらにトレブリーに仕上げた様なサウンドです(今度ご紹介しますね)。そのJEN TONE BENDERは比較的、生産数が多く、当時も売れたようで、今でもビンテージに強いギター・ショップで目にすることが多いと思います。

 もう一つ、広く認知されているTONE BENDERがあります。それがこのSOLA SOUND TONE BENDER(シルバーの筐体/以下SOLA T.B)です。このペダルはTONE BENDERヒストリー的には主軸となるSOLA SOUNDブランドによって作られたペダルで、OEMではなくオフィシャルのTONE BENDERの家系に位置します。先輩(お兄さん)であるTONE BENDER MKI/MK1.5/MKIIに続いて登場したMKIIIは、それまでのじゃじゃ馬なサウンドを継承しながらも、回路を見直すことで動作を安定させ、大量生産に向けたアレンジが加えられています。そのため、サウンドの傾向はそれまでのTONE BENDERに比べると「やや大人しい」印象ですが、安定した動作により、ロー・ゲイン時からフル・ゲインへの歪み感の可変や、新たに追加されたトーン回路により多彩な音色を生み出します。

 個人的な印象としてはロー・ゲインではチューブ・アンプのドライブに近いクランチ、TONEをBASS側に振り切ってフル・ゲインにセットすればFUZZ FACE的なバイオリン・トーンも得られるという、素晴らしく使いやすい、それでいて「ちゃんとオールド・ブリティッシュ・ファズ」のマナーに乗っ取ったペダルだと思います。当時このサウンドはかなり好まれたようで、多くのロック名盤で聴けるサウンドが得られます。TONE BENDERの深淵への入り口としてはまさにうってつけのペダルというわけですね。

コントロールはボリューム、トレブル/ベース、ファズの3つ。ファズつまみは右に回しきったところがゼロとなる。

オン/オフ・スイッチはプリセット・ボタンという名称。

裏蓋を外したところ。バッテリー・ホルダーもないシンプル構造。

内部の基板。トランジスタ3石、各コントロール・ポット、フット・スイッチなどが確認できる。

もっともバリエーション豊富なVOXのMKIII
VOX / TONE BENDER MKIII

VOX / TONE BENDER MKIII

 今回ご紹介した3台の中では、このVOX TONE BEDENDER MKIIIが同一筐体で一番バリエーションが豊富だと言えます。最初期の「リバース・ボード」と呼ばれるゲルマニウム4石トランジスタ・モデル(内1石はダイオードの代用として)、そしてリバース・ボードで3石トランジスタのモデル、SOLA T.Bと同じノーマル・ボードに3石のトランジスタを搭載したモデル(これが一番多く発見できるモデルです)、そしてシリコント・ランジスタ4石の最終モデルです。

 このVOX MKIIIは別の機会にこれらの歴代モデルを弾き比べしてみようと思っています。簡単に言えば、初期の仕様はTONE BEDENDER MKIIIに比べると、やはり「暴れる」サウンド。そこからノーマル・ボードの3石の仕様に向けて、とてもバランスのとれたチューニングに変化していきます。さらにシリコン・バージョンではかなりサウンドが変化しますので、そのあたりを聴き比べても面白いでしょう。また、稀に TONE BENDERのロゴがフット・スイッチより下側にプリントされているモデルも発見できます。これは恐らく(本当に推測)なのですが、フット・スイッチの穴あけの位置を間違えてしまい、仕方なくシルクプリントの位置を変更したのでは? と僕は考えています。ミスプリ、ってことです。いずれ検証してみましょう。

コントロールはSOLA SOUNDと同じくボリューム、トレブル/ベース、ファズの3つ。

TONE BENDERのロゴに「MARK III」のプリントも入る。

VOX / TONE BENDER MKIIIの内部基板。SOLA SOUNDと同じく3石のトランジスタが確認できる。

次回Part.2はVOX TONE BENDER MKIIIのバージョン違いを弾き比べ。お楽しみに⋯⋯!

安定した動作が魅力
PARK / FUZZ SOUND

PARK / FUZZ SOUND

 このPARK FUZZ SOUNDとVOX TONE BENDER MKIIIですが、実はSOLA T.Bより以前に2 KNOBモデルとして登場しています。そのモデルはTB MKIIIとは全く異なる回路構成で、サウンドも別物でした。同じようなルックスなのに2 KNOB? というモデルを見かけたら⋯⋯ぜひお知らせください(笑)

 と言うわけで、3 KONB仕様のこちらのPARK FUZZ SOUND、そしてVOX TB MKIIIはSOLA T.Bよりもわずかに早く⋯⋯と言っても60年台後半のごく数年ですが⋯⋯市場に登場したようです。PARK/VOXは比較的ロット数をまとめて作られたとみえて、極端にゲインが高い/低いという個体差が少ない印象です。それでも内部パーツは(ナゼか?)若干異なるので、1台1台サウンドは「違う」と言えます。このPARK FUZZ SOUNDは比較的ローゲイン(十分ですが)で、オーバードライブ風のサウンドからアンプで得られるオーバードライブの上をゆく、まさに“FUZZ SOUND”が得られます。トーンをBASS側に振り切っても音が「こもり」過ぎないというもの使い勝手の良い点です。他のペダルと組み合わせて使用しても、良好な結果が得られます。

 これらのいわゆる「MKIII TONE BENDER」ファズは良質なペダルであるがために、非常に使い込まれている個体が多く、このことからも長年ミュージシャンに愛されてきたサウンドである、ということが証明されています。特にSOLA T.B MKIIIは現在でも比較的入手が容易ではありますが、修理では特にコンデンサーの容量抜けが目立ちます。それでもトランジスタ同士のバランスは良く、コンデンサーを交換すれば未だに現役で使えるサウンドが得られると思います。このデジマートにも、結構な確率で出現するので見つけたらぜひチェックしてみてください。

コントロールはやはりボリューム、トレブル/ベース、ファズの3つだが、トレブルの効き方は3台の中でもっとも強烈。

SOLA SOUNDと同じ筐体/裏蓋だが、バッテリー・ホルダーがあるのはありがたい。

筐体内部に「1976年3月4日」とデイトがプリントされている。

FUZZ SOUNDの内部基板。やはりSOLA SOUND、VOXとほぼ同じパーツ構成だ。

 今回はTONE BENDER MKIIIの中から、3機種を弾き比べました。わりと近い年代のモデルを選びましたが、音色の違いは確認できると思います。しかし、結局あくまで参考程度にしかなりません。実際にこのTONE BENDER MKIIIを追いかけていくと、とてもたくさんのビンテージ・ファズが複雑に絡まってきます。非常に面倒臭いのですが、それを上回る魅力を秘めたペダルであります。興味を持った皆さんは、ぜひその道のプロのサイトに足を運び、深い考察と知識、そのさらなる魅力に触れてみてください。

 今回の特集は、それらの記事と照らし合わせることでより深い考察のきっかけとなるサウンド・サンプルとして役立てば幸いです(だから詳しい話はほとんど書いていません⋯⋯それでもこのボリューム! やめときゃよかった⋯⋯)加えて、現在でもイギリスでこのペダルは生産されています。ロンドンのMACARISというショップが由緒正しいSOLA SOUNDを継承したペダルを製作しており、一部ペダルはD.A.MやCastledine Electronicsが製作を請け負うことで、ビンテージ・ペダルを正しく現代に蘇らせています。

 というわけで、次回はパート2ということで、VOXのTONE BENDER MKIIIを3台、弾き比べてみます。果たしてどうなるか? お楽しみに。

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製品情報

SOLA SOUND/COLORSOUND / TONE BENDER(MKIII)

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MACARIS、D.A.M、Castledine Electronics / TONE BENDER

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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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