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YAMAHA MONTAGE サウンド・メイキング術【第3回】by 守尾崇

YAMAHA / MONTAGE

新ファームV2.0が公開され、音色面/機能面で進化をし続けるヤマハのフラッグシップ・シンセ、MONTAGE。プロ・ミュージシャンたちが、そのサウンド・メイキングにじっくりと挑戦する本企画の3回目は、さまざまなライブの現場でシンセサイザーを駆使して活躍する守尾崇に登場いただいた。AWM2とFM-Xという2つの音源を搭載するMONTAGEだが、今回は後者に特化した音作りを行い、FM音源の仕組みなどについても解説してもらった。

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YAMAHA MONTAGE Sound Making featuring 守尾崇

※一部演奏中、フット・コントローラーでスーパーノブを操作しています。

現代風にアレンジしたFMエレキ・ベース
“Mo The DX E.Bass”

Morio's Original Sound "Mo The DX E.Bass"

動画でこのサウンドと構築術をチェック!

オペレーターのアルゴリズム。MONTAGEのFM-X音源では、8オペレーターと88のアルゴリズムを使うことができる。

 この音は「FM The DX E.Bass」という、DX7の時代に一世を風靡したエレキ・ベースの音色をもとに作りました。FM音源は、“オペレーター”というユニットを組み合わせて音作りをします。MONTAGEのFM-X音源は8つのオペレーターを持っていて、それぞれ基本的にはサイン波を出力しますが、それらのつなぎ方によって働きが変わってきます。このオペレーターのつなぎ方をアルゴリズムと言い、上から下に向かって信号が流れています。実際に音を出しているのは、アルゴリズムの一番下に配置されている“キャリア”と呼ばれるオペレーターで、ここでは1と2と8です。その上のオペレーター3〜7は“モジュレーター”と呼ばれ、自分の下にあるオペレーターを変調させます。それにより、エレキ・ベースのサウンドが出来上がっています。

オペレーターのレベルは、パネル左側の8つのスライダーで調節できるよう設定されている。

 MONTAGEでは、FM-X音源のパートを選ぶ([PERFORMANCE]を押してからPART SELECT[1/1]を押す)ことで、オペレーター1〜8のレベルがスライダーにアサインされます。プリセットの「FM The DX E.Bass」は、そのままだとちょっときついサウンドだったので、モジュレーターのレベルを下げ、今使っても嫌味じゃないくらいに丸くしました。また、DX7はオペレーターが6つだったので、そのときの音を再現したこのプリセットでは、1と2のオペレーターのレベルがゼロになっていました。ですが、せっかくなのでここではレベルを上げてみます。さらにオクターブを下げ、リリースを短くし歯切れを良くして元の音に加えることで、ローが足されて現代の音楽で映えるベース・サウンドになりました。さらにMONTAGEは、各オペレーターの波形(Spectral)をサイン波以外にすることができるので、オペレーター2の波形とレゾナンスをノブにアサインしました。それぞれを上げ、ちょっとずつ動かしながら弾くと、ベース・ラインが目立つフレーズを演奏でき、下げるとダンス・サウンドの8分裏でずっと鳴っているようなベーシックな音になります。

サイドチェインでグルーブを出すダンス系シンセ
“Mo FM-X DANCE!!”

Morio's Original Sound “Mo FM-X DANCE!!”

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 今回の企画をやるにあたって、FM-Xのプリセットを改めて聴いていきました。その中で、「FM PMW Pad」というパッド音色が明るく今どきでいいなと思い、試しにアタックを速くしてみたら、それだけでも良い感じになりました。これは、3つのパートからできているプリセットだったのですが、パート4〜6にも同じものを重ね、オクターブずらしてより広がりと厚みを出し、さらに現代的な風味を加えるためにパート8でドラムの音をアルペジエーターに演奏させ、これでマスター・エフェクトのサイドチェインをかけています。

パート8に入れたドラムで、コンプレッサーのサイドチェインをかけるように設定。

 そして、よりダンス・ミュージックらしくするために、もう1つFM-X音源のプリセットを選び、アルペジエーターでシーケンス・フレーズを演奏させました。さらにノブの8に、サイドチェインを外しつつアルペジエーターの音色を下げるような設定をしたことで、普通のパッド音色からサイドチェインがかかった音まで、ノブ1つで表現できます。この音色はダンス系の音楽で生きる音ですね。ここではテンポを128にしていますが、もちろん変えていいですし、オーディオ・インに外部からキックの音を入れ、それでサイドチェインをかけるということもできます。ライブなどでやってみると、盛り上がっていいと思いますよ。

リードから過激なサウンドまで自由自在
“Mo Let's FM-X”

Morio's Original Sound “Mo Let's FM-X”

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オペレーター8を、1〜7で変調するというアルゴリズム。

 もとのプリセットはなく、イニシャライズして1から作った音です。ここで使ったアルゴリズムですが、オペレーター8だけが1番下にいます。先ほどのおさらいになりますが、ここでは8のレベルを上げないと音は出ません。そのキャリアである8を、モジュレーターの1〜7がそれぞれ変調するというアルゴリズムなんですが、FM音源ではどんな音の高さ(周波数比)で変調するかによって音色が変わってきます。例えば、1のレベルだけ上げるのと、7だけ上げるのでは、出てくる音は全く違うように設定しています。

スーパーノブ1つを回すだけで、リード・シンセから過激なサウンドまで変化させられる。

 また、両方のレベルを上げてみるとさらに面白い効果も出てきます。そこで、1〜7のレベルをノブで操作できるように設定し、弾きながらノブをいじって音を変化させられるようにしてみました。オペレーター1は、特に変わった変調をするのですが、ノブ2を上げ切ることで壊れたような音になります。さらに、スーパーノブにそれぞれのオペレーターのレベルの変化をアサインしてあるので、ベーシックなリード・シンセから、複雑で過激な音まで簡単に出せるようになっています。

曲に奥行きを与えるカリンバ音色
“Mo FM-X Kalimba”

Morio's Original Sound “Mo FM-X Kalimba”

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 もとのプリセットは「FM Two Kalimbas」というカリンバの音色です。それまでのアナログ・シンセだと作れなかったアタックの強い音、金属的な音がFM音源によって出せるようになり、当時こういった音はすごく流行りました。ただ今聴くと、ちょっとカリカリし過ぎな印象です。このプリセットは2パートが重なったもので、1つはわりと丸くて、もう1つはプツプツいうような音。それぞれのモジュレーターのレベルを下げることで全体的に音をちょっと丸くして、さらにエフェクトがちょっと昔っぽいディレイだったので、それをリバーブにして優しい感じにしました。歌のバック、ダンスものの間奏など、いろんなジャンルで使えると思います。

インパクト抜群のライザー・サウンド
“Mo FM-X Rise Up”

Morio's Original Sound “Mo FM-X Rise Up”

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この音色で使ったアルゴリズム。

 これもイニシャライズから作りました。弾いているとだんだんピッチが上がっていくという音色です。PCM音源でもパートを複数重ねることで似たような音は作れますが、FMなら1パートででき、音を出しながら波形を変化させることもできます。オペレーター1が2を、3が4を変調し、5、6、7、8からはオペレーターからの波形がそのまま出ています。そのうえで、各オペレーターの波形をノブ2で、Skirt(波形の倍音の広がり)をノブ3で、レゾナンスをノブ4で変化させられるように設定してあり、組み合わせで音がいろいろ変わるので、それぞれを好きなところまで上げて使ってみてください。もちろん弾きながら動かして変化させるのも効果的です。また、ノブ1でLFOのスピードを上げられるように設定していますので、併せて駆使すると、曲の間奏やブレイクなどでインパクトを出せるでしょう。盛り上がりたいときにぜひ使ってください。

サウンド・メイキングを終えて……
Morio’s Impression

 MONTAGEは普段から活用していますが、プリセットだけで十分使えてしまうので、ここまでがっつりとエディットしたのは実は初めてでした(笑)。今回は、FM-X音源に特化して音作りをしてみましたが、やっぱり自由度が高いのが楽しいですよね。DX7にはありませんでしたが、MONTAGEはフィルターが付いているので音が作りやすい。FM部分で多少変調し過ぎても、フィルターで良い感じにまとめられるので、昔と比べて音作りはしやすくなりました。あと、MONTAGEの音の良さも改めて感じました。FMとAWMをクロスさせずに、両方の音源が別々に完成された形で搭載されているので、それぞれの持ち味を生かせるし、また重ねることもできるのが良いと思っています。機能が多いのでイチから音を作ろうと思うと大変ですが、簡単なエディットのパラメーターは8つのノブとして外に出ているので、ここをいじるだけでもいろいろ音が作れます。最初はそこからスタートして、そのうちぜひFMの音作りに興味を持ってもらえたらいいなと思います。僕自身にとっても今回は良い機会になったので、これからどんどん音作りして、さらに新しいFMの可能性を探してみたいですね。


■【製品解説】YAMAHA MONTAGEのサウンドとは?【連載第1回・記事内の製品解説へ

YAMAHA MONTAGE7(76鍵モデル)/ 価格:オープン・プライス

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【連載】YAMAHA MONTAGE サウンド・メイキング術

【第1回】岸田勇気

【第2回】NOBU-K

キーボード・マガジン 2018年4月号 SPRING 発売中!

 本記事は、リットーミュージック刊『キーボード・マガジン 2018年4月号 SPRING』の特集記事を転載したものです。本号付録CDには守尾氏が作成したサウンドに加え、動画で披露したバック・トラックも収録しています。
 通巻400号記念となる今号のキーボード・マガジン特集は、“キーボードのこれから”。現在のシーンの真ん中で創作を続けるミュージシャンたちに、彼らが実際に体感している変化についてさまざまな角度から聞いています。また、本誌がともに歩んだキーボードと音楽の歴史を総括しました。そして付録CDにはキーボーディストが制作する400号記念ジングルも収録していますので、ぜひ本記事で収録したサウンドと併せてお楽しみください!

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製品情報

YAMAHA / MONTAGE7

価格:オープン

【スペック】
●鍵盤数:76鍵FSX鍵盤(イニシャルタッチ/アフタータッチ付)●音源方式:Motion Control Synthesis Engine(AWM2=8エレメント、FM-X=8オペレーター、88アルゴリズム)●最大同時発音数:AWM2=128音(ステレオ/モノ波形いずれも)、FM-X=128音●マルチティンバー数:内蔵音源16パート、オーディオ入力パート(A/D、USB〜ステレオ・パート)●波形メモリー:プリセット=5.67GB相当(16bitリニア換算)、ユーザー=1.75GB●パフォーマンス数:約1,900●フィルター:18タイプ●エフェクター:リバーブ×12、バリエーション×76、インサーション(A、B)×76(A/Dパート・インサーションは71)、マスター・エフェクト×15、マスターEQ(5バンド)、1stパートEQ(3バンド)、2ndパートEQ(2バンド)●シーケンサー:容量=約130,000音、音符分解能=4分音符/480、テンポ(BPM)=5〜300、曲数=64曲、トラック=シーケンサー・トラック×16/テンポ・トラック/シーン・トラック、レコーディング方式=リアルタイム・リプレース/リアルタイム・オーバーダブ/リアルタイム・パンチ、再生=MONTAGEオリジナル・フォーマット、SMFフォーマット0,1●アルペジエーター:パート=最大8パート同時オン可、プリセット=約10,000タイプ、ユーザー=256タイプ●モーション・シーケンサー:レーン=最大8+1系統●ライブセット数:プリセット=128以上、ユーザー=2,048●接続端子:アウトプット(L/MONO、R)、アサイナブル・アウトプット(L、R)、PHONES、A/D インプット(L/MONO、R)、USB TO DEVICE、USB TO HOST、MIDI(IN、OUT、THRU)、フット・コントローラー×2、フット・スウィッチ(アサイナブル、サステイン)●外形寸法: 1,244(W)×131(H)×396(D)mm●重量:17kg
【問い合わせ】
ヤマハお客様コミュニケーションセンター TEL:0570-015-808
YAMAHA MONTAGE製品情報ページ
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プロフィール

守尾崇(もりお・たかし)
作曲・編曲家、シンセ弾き。楽器開発やCM、ゲームなどさまざまな音楽制作にかかわった経験を生かし、ケツメイシへの楽曲提供やD-LITE、SPYAIRなどのライブ・マニピュレーターとして活動中。

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