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【#_SUPERCOMBO_ の機材夜話】 第2回 ポータブル・シンセ界をリードするmicroKORG

KORG / microKORG

クラブ・ミュージック・カルチャーからの視点で音楽制作ツールを語る#_SUPERCOMBO_ の機材夜話。今回のテーマはKORG microKORGです! 2002年に発売されて以来ずっと売れ続けているシンセサイザーで、あらゆるシーンで活躍するサブ・キーボードとして不動の地位を確立。そんなロングセラー商品について2人が語ります!

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長年愛され続ける魅力的なサウンド

MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABO(以下、ABO) ── さて1,2さん。今回語り倒す機材は、コンパクトなボディながら存在感あるサウンドが愛されて17年、KORGのシンセサイザーmicroKORGですよ!

大きめなノブやサイドのウッド・パネルはトラディショナルなアナログ・シンセのデザインを想起させる

DJ 1,2(以下、1,2)── 17年も売れ続けるシンセってちょっとほかに類を見ないよね。僕はネプチューンズが使用してるってことで存在を強く意識するようになった。ゼロ年代のUSヒップホップやR&Bでは、TRITONとともに幅広く使われまくってた印象があるね。

ABO ── うん、アンチコン(ロサンゼルスのアンダーグラウンド・ヒップホップ・レーベル)周りとかね。あとスケッチショウ(細野晴臣&高橋幸宏によるユニット)など、テクノやエレクトロニカのミュージシャンも良く使っていた。ボコーダーも搭載してゴリゴリしたシンセ・ベースが出せたから、当時はちょうどダフトパンク旋風が吹き荒れてた時代でもあって、エレクトロの人たちにも重宝されたよね。価格もお手頃だし。

過去に発売されたカラー・バリエーション。これらが登場するたびに話題となり、ファンを増やしていった。左上から順にmicroKORG BK、microKORG BKBK、microKORG BKRD、microKORG GD、microKORG PT。すべて生産完了しているが、デジマートに中古品が出品されている可能性もあるので、興味があったらぜひチェックを!

1,2 ── とにかく安くて音が太い! 僕も玉置浩二さんのライブ・サポートでボコーダーとして使ったりしてるよ。microKORGはバーチャル・アナログ・シンセなのにエレピやオルガンといったキーボード系の音作りもできる。これも幅広い現場で今でも重宝されてる理由なんだろうね。

ABO ── そう! microKORGにはオシレーターにDW6000DW8000から継承されたDWGS音源のデジタル波形が64種類も搭載されてるんだよね。この波形がmicroKORGを単なるコンパクトなバーチャル・アナログ・シンセで終わらせない幅広い音作りを可能にしてるキモだと僕は思ってる。

1,2 ── これらの波形は複雑な倍音を含んでいるんだけど、それぞれが独特で“気持ちの良い丸さ”と“冷んやりした感じ”を併せ持つ質感なんだよね。それが64種類も。microKORGのDWGS音源はそう…“チルい”んだよね。

ABO ── その感じは良く分かる。実際に発売当時から、まさに“チルいエレクトロニカ”とかでもこの部分の音が良く使われてた。microKORGの音色は「TECHNO」とか「ELECTRONICA」といったように音楽ジャンルで分類されていて、オーソドックスに音色の種類で分類されていないというのも特徴的だよね。

ジャンルごとにカテゴリされたダイヤル式のプログラム・セレクターで音色を選ぶことは、当時のシンセとしては実にユニークだった

通常、簡単な音色変化ができる5つのノブは、音色のフル・エディット時、各セクションのパラメーター設定で活躍する

1,2 ── ジャンル名が書いてあることで、音のイメージから絞り込んで音色を探しやすくなった。それだけじゃなくて、「HiphopのトラックにTranceの音色を当ててみたらどうなるだろう?」っていうような天邪鬼な実験精神もくすぐりやすくなった。もし音色が楽器の種類別に並んでたら、こういう気持ちになれないと思う。

ABO ── 確かに! 実際ヒップホップの人たちが反応してた音色はヒップホップ・バンクの音だけじゃなくて、エレクトロニカ・バンクのアブストラクトな音色とかを好む人も多かった。順接的であれ、逆説的であれ、一種の提案に対しての新しいレスポンスが生まれた感じがするよね。

1,2 ── ヒップホップやブラック・ミュージックの世界での話をもう少しすると、G-Funkで良く使われるトークボックス。これは音をホースを使って直接口の中に送り込み、口内で共鳴させることでロボットが歌っているようにするエフェクターなんだけど、microKORGが発売以降、その入力ソースのスタンダード・シンセとして重宝されるようになった。

microKORGを入力ソースにしたトークボックスのデモ。この動画ではRocktron BANSHEEをトークボックスとして使用しているようだ

ABO ── トークボックス・シーンではmicroKORGだったりDX100だったりと、ミニ鍵盤のシンセを使う伝統がある。しかしこの定番機材の変遷もただ小さいシンセなら良いっていうわけじゃなくて、“音が立っていて声を変調させた時に引っ掛かりが良いか”というところが重要なんだ。

1,2 ── microKORGは前述のとおりDWGS音源の波形も搭載して、単なるアナログ・シンセ以上の表現力があるし、どの波形も中域がリッチで存在感があるよね。きっとMS2000と同等のエンジンを積んでいることもあって”本物感”があるというか。もちろん、最近のバーチャル・アナログ的な滑らかさはないんだけど、音の形が良いんだろうね。

ABO ── 分かる。KORGの音って“盛れてる”感じがするんだよね。“盛れてる”っていうのは女の子が自撮りをスマホで加工するときに、いい感じに可愛い感じに仕上がることを言うんだけど、音にもそれに近いものがある気がしてて。ハイエンドなことを言い出せばキリがないけど、きちんと美味しい感じに仕上がってるっていうか。ちょっと専門的な言い方をすれば倍音がきれいに立ってるっていう感じね。最近のワン・ノブで良い感じに仕上げてくれるプラグインも、要は“盛れる”ってことじゃん。

1,2 ── なるほど。microKORGの音は確かにすでに“盛れてる”。同時期のTRITONも“盛れてる音”がしたからティンバランドやスウィズ・ビーツのようなヒップホップ/R&Bプロデューサーが使ったって側面もあると思う。みんな話が早い機材が好きだからね。

ミニ鍵盤ならではの操作性

オクターブ・シフト・ボタンとホイールを左手で同時にコントロールできるのもコンパクトなサイズならでは

鍵盤を演奏しながら、ノブを操作しやすい絶妙なレイアウト

ABO ── 話が早いというと、パラメーターが基本的にはすべてトップ・パネルに明記されているので、ノブをグリグリいじりながら音を作れるってのは優れてるよね。

1,2 ── 演奏面から見てもあのボディのデザインと操作子のレイアウトは絶妙で、microKORGならではの演奏スタイルを産んだと思う。僕なんかmicroKORGのサウンドというと、あのフィルターの開閉音とセットと言っても良いくらい。フィルターのにじみ方も独特だしね。動画投稿サイトが流行ってからは、microKORGを使ってダフトパンクをカバーしてみた!みたいなものから、Jaloz「Chillin」のようにメロウなものや、ドリアン・コンセプトのように極限まで使い倒すエクストリームな演奏動画も数多く見られるようになった。

YouTubeでmicroKORGと検索すると上位にヒットするJaloz「Chillin」

ABO ── ドリアン・コンセプトはすさまじいよね。ミニ鍵盤でなければ絶対届かないであろうフレージングを弾いたり、左手でオクターブ・スイッチとモジュレーション・ホイールを片手で同時に動かしながら弾いたり……彼の動画は見るたびに新しい発見がある。

ドリアン・コンセプトによるmicroKORGの超絶パフォーマンス

1,2 ── オクターブ・スイッチとピッチベンド/モジュレーション・ホイールが、すべて左手で操作できる距離感にあるし、フィルターなどノブが5つにまとめられていて使いやすい位置にある。これは本当に奇跡のレイアウトだと思う。ノブが大きいのもうれしいね。特にフィルターを動かした時なんかは、あの時代のバーチャル・アナログ独特のいい感じの音がする。本物のアナログ・フィルターと同じではないけど独特な気持ち良さがあるんだよね。

黎明期のバーチャル・アナログ・サウンドの魅力

ABO ── そうなんだよね。最近、黎明期のバーチャル・アナログ・シンセが段々とビンテージ・シンセ化してきている。これらはアナログ・シンセのシミュレーションとして作られたものだけど、だんだん「その音が欲しい」という需要が増えてきているのが面白いよね。現にデジタル・ディレイも、そのデジタルくささが気持ち良いと見直されて、存在感が増してきてるもんね。microKORGのディレイ・エフェクトは、ディレイ・タイムをノブでグイッとひねって「ピチュン!」って発振させられるんだけど、この音も独特の気持ち良さがある。このあたりの感じは僕も大好きな初代エレクトライブの赤こと、ELECTRIBE・Rについてるディレイにも共通してるけど。

1,2 ── ELECTRIBE・Rも良いよね! バーチャル・アナログ音源が使われているリズムマシン。コイツも独特な存在感がある音としていまだに根強いファンが多いよね。やっぱり90年代からこの時代にかけてのバーチャル・アナログ音源って個性的だよなぁ。

ABO ── そうだねぇ。ELECTRIBE・R、またSNSを中心に流行りつつあるし。KORGは90年代前半にパーカッション・シンセサイザーWAVEDRUMでモデリング音源に本格的に参入。その後95年にProphecy、そして97年にZ1を発売した。ProphecyとZ1というシンセサイザーは、13種類のモデリング・オシレーターを搭載したMOSS音源が採用されていて、とにかく音が太いってのが評判だった。特にZ1はUKのドラムンベースの人たちも使ってたよね。太いモデリング音源っていうKORGのキャラはこの頃固まった気がする。

1,2 ── MOSS音源は、当時のワークステーション・シンセTRINITYTRITONにも搭載することができた。その後、バーチャル・アナログ・モデリング音源のMS2000が登場して、そのエンジンを継承したmicroKORGへという流れか。

ABO ── TRITONはトラックメーカーの中でもとにかくヒットしたからね。KORGはもちろん今も最高だけど、この時代の勢いがすごかった。

1,2 ── 確かに当時は銀色のシンセをいたる所で見かけたね。

ABO ── 99年くらいなんかすごくて、J-POPシーンには「トリニティ」や、「Z-1」っていうアイドル・グループも居たんだよ。

1,2 ── 知らないよ(笑)! しかも偶然でしょ!

ABO ── いや、分からないよー?(笑) TRINITYという名前が付いたダンス・スタジオもあるし。

1,2 ── 本気で言ってんの!?っていうかここまでの話、もしやアイドルの話がしたかっただけ!?

ABO ── Z1のようなモデリング音源のバーチャル・アナログ部分を継承しながらキュートなボディにパワフルさも併せ持ち、デビューから今に至るまでさまざまな現場で愛され続ける。microKORGはシンセ界のアイドルってことでひとつ、どうかな?

1,2 ── また次回〜!

KORG / microKORG、microKORG S

creator-4-8.jpg ELECTRIBEシリーズやMS2000などにも採用されているDSPによるアナログ・モデリング・システムを搭載したミニ鍵サイズのシンセサイザー。ノコギリ波、矩形波など8タイプのオシレーター・アルゴリズムを用意し、バーチャル・パッチ機能を使ったマニアックな音作りも可能。また、ボコーダー機能を手軽に使用できるほか、エフェクター(モジュレーション系×3、ディレイ×3、2バンド・イコライザー)、発音リズムを設定可能なステップ・アルペジエーターも搭載している。なお、2016年にはスピーカーを搭載し、メモリー倍増で新しいプリセット・サウンドを追加した上位機種、microKORG S(画像右)も発売された。

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プロフィール

MEEBEE a.k.a KAZUHIRO ABO( #_SUPERCOMBO_ )
1984年生まれ。1998年より地元でDJ/トラックメイカーとしての活動をスタートし、2002年に上京。さまざまなアートに触れる日々を送りつつ、活動を本格化させる。2008年から新木場ageHaで約2年間に渡って開催されていたパーティ「Cloudland」では毎月2,3時間のロング・セットを行なうレギュラーDJを務めたことで、シーンに独特な存在感を示す。サウンド・クリエイターとしてもダンス・トラックのみならず、美術作品のための音響製作や、パフォーマンス・ガールズ・ユニット「9nine」のライブ音源制作、ファッション・ショーや映像作品のための音楽/音響制作、ゲーム音楽やアニメ劇伴なども手がける。

DJ1,2( #_SUPERCOMBO_ )
日本を代表するターンテーブリスト。ヒップホップ・カルチャーの根付く街、青森県三沢市にて、14歳から独学でDJを始める。その後DMCを始めとする多数のDJバトルに出場し、華やかな戦歴を残す。2003年には19歳という若さで、世界3大DJ大会の1つのITF Japan finalにて優勝。日本代表としてドイツ・ミュンヘンにて行なわれた同大会の世界大会に出場する。その確かなスキルは、玉置浩二、Def Tech、MIYAVIなど、多数の著名アーティストから絶大な信頼を得て、ツアーDJとして選び抜かれる。近年ではNHKへの出演や楽曲提供、海外でのイベント出演等、ターンテーブリストとしての活躍の場をさらに広げている。まさにオールラウンド・プレイヤー。

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