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スカートが揺れるほどの爆音の中でクリップ・チューナーは機能するのか?

爆音クリップ・チューナー実験

  • 文:井戸沼 尚也(室長)
  • 写真:星野 俊

今回は、クリップ・チューナーに関する実験です。実験内容はまさしくタイトルの通りです。爆音の中で、クリップ・チューナーがちゃんと使えるのか、実験・検証してみました。なお、今回の記事はギター・マガジン2015年9月号(8/13発売)のクリップ・チューナー特集と連動しています。併せてお楽しみください!

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【実験テーマ】爆音の中でクリップ・チューナーは使えるのか?

■クリップ・チューナーにまつわる噂
バンド演奏中、クリップ・チューナーが使えない

 まぁ、これは噂っつーより実体験です、私の。そもそも著名なミュージシャンでライブ中にクリップ・チューナーでチューニングしようという人はあまりいませんよね。大抵、ラック式かペダル式のチューナーで、ビシッと合わせています。私が敬愛する某ギタリストは先日のライブで、ピアニストに大声で「“ミ”ちょうだい!」と仰っていましたが(笑)、2015年現在こういう方は本当に貴重なので、皆で大切にしたいですね。“E”ですらなく“ミ”というところも最高です。

 話が逸れましたが、私がなぜできればクリップ・チューナーを使いたいかと言えば、“ギターとアンプとの間に、できるだけモノを挟みたくない”からです。チューナーもクリップ式で済ませられたらいいなと思うのですが、これがなかなか難しい。例えば、曲の途中、ギターだけが休みのパートでチューニングの確認をしておきたいと思っても、チューナーがうまく作動しません。悪魔のようなベーシストが爆音でベース・ラインを弾いており、それで私のギターのヘッドも振動してしまうためです。なんとかならんかのう。

 そう思っていたある日、ギター・マガジン編集部のS氏がやってきて、「実は今度のギター・マガジンで『クリップ・チューナー特集』をやります。たくさんチューナーを用意するので、爆音で試してみたらどうですか?」というではありませんか! それを隣で聞いていたいつものデジマート編集部W氏は、

「いいね! じゃ室長、またあれ! スカート揺らしちゃって! そこで弾けばいんじゃね?」

と素敵なアイディアをくださり、トントン拍子で実験が決まりました。

【実験環境】

■使用機材
ギブソンES-335(ギター)
エングル・ファイヤーボール100(アンプ)
ベルデン9778(ケーブル)
t.c.electronic Ditto X2 (ルーパー)
ギブソン・レス・ポール・ピュアニッケル・ワウンド10(弦)
V-PICKS V-TRUL(ピック)
Aria ACTM-01 (クリップ・チューナー)
BOSS TU-10(クリップ・チューナー)
D’Addario PW-CT-13 NS Micro Universal Tuner(クリップ・チューナー)
ESP CT-2000GBU(クリップ・チューナー)
Fender FCT-12(クリップ・チューナー)
GoGo Tuners TT-1(クリップ・チューナー)
Greco GT400C(クリップ・チューナー)
KORG Sledgehammer PRO(クリップ・チューナー)
Louis LCT-X(クリップ・チューナー)
Morris CT-4(クリップ・チューナー)
Peterson Strobo Clip(クリップ・チューナー)
PLAYTECH Clip Tuner(クリップ・チューナー)
SNARK SN-2(クリップ・チューナー)
t.c.electronic PolyTune Clip(クリップ・チューナー)
YAMAHA YTC-5(クリップ・チューナー)
◎ 騒音測定機(iPhoneアプリ)
◎ 耳栓(人数分)
◎ スカート(使用済み)
◎ トルソー(約11号)

※ セッティングについて
■今回はまず、比較的音圧を稼げるハムバッカー搭載器(ES-335)でリフを弾き、それをルーパーに入れておきます。
■ルーパーの音源を、第3回地下実験室で“スカートが揺れる最強の音圧を持つアンプ”に認定されたエングル・ファイヤーボール100にぶち込み、アンプ正面にてクリップ・チューナーでチューニングします。チューニングは5弦開放を、G♯あたりから上げてAに合わせることでチェックします。
■音源を再生するアンプの設定はマスター・ボリューム以外は変えず、同一ボリュームですべてのチューナーをチェック。使用したチューナーは15種類です。
■1回戦:アンプのボリューム1、2回戦:ボリューム2.5、決勝戦:ボリューム10。各ステージにおける音圧感は、アンプ前に置いたスカートの揺れ具合でチェックしてください。
■反応しない・反応の悪いチューナーは、その時点で脱落。動画ではヘッドからはずしています。最後まで残るチューナーがあるかどうか、実験・判定します。

【特記】以下の本文では、クリップ・チューナーのモデル名/型番を省略し、ブランド名のみで表記しています、ご了承ください。

実験動画

実験1 1回戦:アンプ・ボリューム1

 まずはボリューム1です。ルーパーにはES-335の6弦をDまで落として“やかましい感じのリフ”を入れてみました。と言ってもマスター・ボリュームは1ですから、音量的にはたいしたことはありません。“ワルい、ボサノヴァ・バンド”くらいでしょうか、見たことはありませんが。スカートも、ほんのわずかに揺れているくらいです。この状態で全15機種のクリップ・チューナーを試したのですが、どれも問題なくチューニングできました。まぁ、1回戦はこんなものでしょう。次にいってみます。

実験2 2回戦:アンプ・ボリューム2.5

 次はボリューム2.5です。ずいぶんと中途半端な設定ですが、実は3だとあまりにも音がデカ過ぎたという事情があります。エングル、すごいぜ! で、ボリューム2.5のアンプの前で15種類のチューナーを使い、チューニングしていきます。ここからは騒音測定もしていきますが、おっ、マックス101dBくらいですね。かなりうるさいです。スカートもゆさゆさ揺れ始めましたよ! こんなことが、なぜこんなに嬉しいんでしょうか? と、ここで早くも1台目のAriaが反応しません……(動画では、反応しないモデルはチューニングの最後にヘッドからはずしています)。ええー、丸みを帯びたフォルム、見やすいディスプレイ、これ、好きなのに!?

 2回戦では他にGoGo、Greco、KORG、PLAYTECH、SNARKは無念、チューニングできませんでした。また、Petersonは表示される音程が不安定、D’Addarioは何度か反応が途切れたり動作が不安定で、最終的に5弦開放が“A”を示しましたが、あまりにも時間がかかったのでバンドなどでの使用はちょっと厳しいという判定です。かなり高性能なチューナーもこの実験2で脱落しましたが、精度が高過ぎて劣悪な環境下での使用に向かないということは考えられます。各ブランドの名誉のために言っておきますが、チューナーが悪いというより、エングルがうるさい!!のであります。

【お詫び】
 Fenderのチューナーですが、この動画で確認する限りばっちりチューニング出来ていますので、本来は決勝に残る実力があるチューナーでした。しかしながらそれを2回戦で落としてしまいました。理由は次の通りです。取材時、カメラは液晶を正面から捉えていますが、弾いている私から見ると少し角度が付いているんですね。で、この機種の場合、それが非常に見づらい。動画でも、チューニングがAで合っているにも関わらず、首を曲げて覗き込んでいる姿が確認できます。私の実験ノートには「角度により、GがBに見える」とあり、これはアカンと現場で判断しました。しかし、自分の見やすい角度に調整して使えばまったく問題はなく、クリップ・チューナーとは本来そういうものですから、これは私のミスジャッジです。すみません。気を取り直し……にくい重いエラーですが、すみません、決勝へ進みます。

実験3 決勝戦:ボリューム10

 最後はボリューム10、フルテンです。実験2で“ボリューム3だとあまりにも音がデカイので、2.5にしました”と言っているアンプのボリュームを一気に10にする暴挙! ルーパーの音を出していなくてもノイズだけでもの凄くうるさく、ジェット機のエンジンの前にいるようで、ちょっと怖い感じすらします。スタッフ全員、耳栓着用で怒鳴りあいながらやりとりしていますが、正直何を言っているか全然わかりません。はあ、へえと適当に相槌を打って、適当に実験を始めます。ちなみに、このステージでの騒音測定値は、最大で102dBでした。実験2とは1dBしか違いませんが、体感上はまったくの別世界です。スカートもゆらゆら揺れています。この爆音に耐えられるチューナーは、あるのでしょうか?

 まずはBOSSから。む。反応せず……。まぁ、やむなしといった感じですね……。ESPは、おお、普通に反応します! ちょっと時間がかかりましたが、チューニングできました! Louisは何度か“合った”と思ったのですが表示が安定せず、断念。Morris、これもばっちりチューニングできましたよ! t.c.electronicは、むーん、周りの音に反応して“ポリチューン・モード”(全弦の音を一度に確認できる凄いモード)になってしまうようです。5弦のチューニングは、できず。最後はYAMAHAです。お!? これはすごい! 通常となんら変わらない速さ、安定感でチューニングできました。これは感動です! 対爆音の最強クリップ・チューナーは、YAMAHAではないでしょうか!?

実験結果

結論:スカートが揺れるほどの爆音の中で機能するクリップ・チューナーは、ある

裏結論:バンドの中でクリップ・チューナーを使うなら、バンド・メンバーに「うるせえ」と言った方が早い

 優れた機能・性能のクリップ・チューナーはたくさんありましたが、今回は特殊な環境下での使用に的を絞ったので、このような結果となりました。いやーしかしYAMAHA YTC5には感動しましたよ。自腹で購入して、自分のバンドで使ってみたいです。これでうまく作動しなかったら、周りのメンバーに音量を下げてもらいます。チューナーとしての機能以外に、“バンドの音が無駄にでかくないか測定するマシン”として活用するつもりです。

 本来は、クリップ・チューナーに求められる性能はチューニングの精度、視認性、操作性などだと思います。8月13日発売/ギター・マガジン9月号クリップ・チューナー特集では、その辺りを追い込みつつ、“身体の突起にチューナーを挟んで、クリップ力を測る”などといった地下実験室的なこともしておりますので、ぜひご覧ください。

 では次回、地下19階でお会いしましょう!

チューニング動作をチェック!

 ここでは各モデルのチューニング動作を動画で紹介します。詳しい機能解説などはギター・マガジン2015年9月号のクリップ・チューナー特集にてご確認ください。
※サイズ、重さはギター・マガジン編集部による計測値です。

Aria / ACTM-01 Metro-Tuner

【Specifications】
サイズ:37(W)×15(D)×60(H)mm / 重さ:36g
【Website】
http://www.ariaguitars.com/jp/items/electronics/tuner/actm-01/

価格:1,800円

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BOSS / TU-10 Clip-on Chromatic Tuner

【Specifications】
サイズ:72(W)×32(D)×34(H)mm / 重さ:42g
【Website】
http://jp.boss.info/products/tu-10/

価格:オープン

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D'Addario / PW-CT-13 NS Micro Universal Headstock Tuner

【Specifications】
サイズ:25(W)×32(D)×13(H)mm / 重さ:20g
【Website】
http://www.kcmusic.jp/planetwaves/tuners_electronics.html

価格:3,400円

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ESP / CT-2000GBU Chromatic Headstock Tuner

【Specifications】
サイズ:56(W)×14(D)×31(H)mm / 重さ:26g
【Website】
http://www.espguitars.co.jp/accessories/tuner/

価格:オープン

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Fender / FCT-12 Color Clip-On Tuner

【Specifications】
サイズ:54(W)×12(D)×30(H)mm / 重さ:26g
【Website】
http://www.fender.co.jp/accessories/tuners/fender-fct-12-color-clip-on-tuner-black/

価格:2,800円

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GoGo Tuners / TT-1

【Specifications】
サイズ:71(W)×14(D)×37(H)mm / 重さ:50g
【Website】
http://www.pearlgakki.com/gogotuners/GG_TT1.php

価格:オープン

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Greco / GT400C

【Specifications】
サイズ:62(W)×14(D)×38(H)mm / 重さ:33g
【Website】
http://www.greco.jp/accessories/gt400c.html

価格:1,400円

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KORG / Sledgehammer Pro Clip-On Tuner

【Specifications】
サイズ:62(W)×26(D)×24(H)mm / 重さ:28g
【Website】
http://www.korg.com/jp/products/tuners/sledgehammer_pro/

価格:5,400円

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Louis / LCT-X

【Specifications】
サイズ:32(W)×16(D)×60(H)mm / 重さ:32g
【Website】
http://www.shimamura.co.jp/originalbrand/louis/lct_x.html

価格:2,590円

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Morris / CT-4

【Specifications】
サイズ:55(W)×13(D)×33(H)mm / 重さ:26g
【Website】
http://moridaira.jp/archives/74800

価格:1,400円

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Peterson / Strobo Clip

【Specifications】
サイズ:60(W)×15(D)×35(H)mm / 重さ:45g
【Website】
http://www.electroharmonix.co.jp/peterson/stroboclip.htm

価格:12,800円

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PLAYTECH / Clip Tuner

【Specifications】
サイズ:49(W)×9(D)×26(H)mm / 重さ:25g
【Website】
http://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/192540/

価格:500円

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SNARK / SN-2

【Specifications】
サイズ:42(W)×19(D)×42(H)mm / 重さ:35g
【Website】
http://www.kikutani.co.jp/SNARK/SN-2.html

価格:1,900円

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t.c.electronic / PolyTune Clip

【Specifications】
サイズ:25(W)×8(D)×60(H)mm / 重さ:32g
【Website】
http://www.tcelectronic.com/ja/polytune-clip/

価格:6,225円

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YAMAHA / YTC5

【Specifications】
サイズ:56(W)×15(D)×32(H)mm / 重さ:28g
【Website】
http://jp.yamaha.com/products/musical-instruments/guitars-basses/accessories/tuners/ytc5/

価格:1,500円

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製品情報

クリップ・チューナー

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プロフィール

井戸沼 尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジンチャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。
井戸沼尚也HP 『ありがとう ギター』

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