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Gibson Les Paul(ギブソン/レス・ポール)

Gibson Les Paul(ギブソン・レス・ポール)の歴史と変遷(記事一覧はこちら)

レス・ポール・レギュラー/スタンダードの変遷 Part3(1959年型〜1969年型)

【1959年型】ネック・グリップがひと回りスリムになり、フレット幅を0.075インチから0.1インチに変更

 この年には、ネック・グリップがひと回りスリムになった、いわゆる“59グリップ”と呼ばれるものに変わった(前年までの太いグリップも混在する)ことと、フレットが0.075インチ幅のレギュラー・フレット(ナロー・フレット、あるいはスモール・フレットとも呼ばれる)から、0.1インチ幅のワイド・フレット(ラージ・フレットとも呼ばれる)に変更されたことが特徴だ。

 これらは、ピックアップやボディ・カラーの変更に比べると小さな変更にも思えるが、プレヤビリティに及ぼす影響は計り知れないほど大きい。チョ―キングやビブラートが格段にかけやすくなったこの仕様によって、後の1960年代のロック・ギターの奏法が大きく変わった。その立役者は、ブルース・ブレイカ―ズ時代のエリック・クラプトンだ。当時彼の影響を受けたピーター・グリーン、ミック・テイラー等が1959年型を使用し、ジェフ・ベックやジミー・ペイジ等もテレキャスターから持ち替えたことで、70年代には彼らのフォロワーが必死で“古いレス・ポール”を探すことになる。しかし、発売当時は60年代以降程、その人気は高くなかったようだ。

【1960年型】ネックのジョイント角を3度から5度に変更。塗料は、赤みが退色しにくいものに。

 この年には、ネックのジョイント角が3度から5度へ変更される。これにより、テンションきつめ・サステインは多少短め・サウンドは多少明るめという60年型のキャラクターが決定される。60年後半には、ぐっと薄くなった“フラット・アンド・ワイド”と呼ばれるネック・グリップに変更される。このことも60年型のキャラクター形成に一役買っているものと思われる。

 この年、塗料も変わり、赤みが退色しにくいものが採用された。このため、60年型のレス・ポールには明るい色合いの、鮮やかなチェリー・サンバーストの個体が多い。この60年型までが、いわゆる“オリジナル・レス・ポール”だ。1961年初頭にはレス・ポールの全ラインナップがフル・モデル・チェンジされ、いわゆるSGへと変貌する。

 1961年以降、レス・ポール・スタンダード(レス・ポール氏との契約もあり、モデル名は1963年まで継続された)の生産台数は約3倍あまりに上昇している。フェンダー・ギターをも凌駕する先進的なストリーム・ラインを使ったダブル・カッタウェイ・シェイプ、ロング・バイブローラ、鮮やかなチェリー・フィニッシュといった最新スペックが多くのギタリストを虜にしたことも想像に難くない。逆に言えば、それまでのオリジナル・レス・ポールの人気は、発売時には大したことがなかったともいえる。

 シングル・カッタウェイのオリジナル・レス・ポールは、1966年にクラプトンがブルース・ブレイカ―ズでプレイした通称『ビーノ・アルバム』で人気が爆発するまで、数あるギターの中の一種でしかなかったのかもしれない。

【1968年型】中古レス・ポール人気の高まりを受けて、再生産モデルを発表

 1960年代半ば以降の“中古”レス・ポール人気の高まりを受けて、ギブソンは1967年頃にレス・ポール氏と再契約を結び、1968年に再生産モデルを発表した。

 ところが、当時のギブソンは市場調査が十分だったとは言えない面もある。再発売されたのは、人気があった“バースト”タイプではなく、ゴールド・トップにP-90をマウントした56年製スタイルのレス・ポール・スタンダードであった。同時に発売されたレス・ポール・カスタムは、50年代のマホガニー・ボディとは異なり、メイプル・トップを採用、ピックアップも再生産スタンダードのP-90とは異なりハムバッキング・ピックアップを採用し、実質的にはこちらのモデルが50年代のサンバースト・レス・ポールの仕様を引き継いだ形だ。再発売されたレス・ポール・スタンダードは、スモール・ヘッドストック、1ピース・マホガニー・ネック、2ピース・メイプル・トップ、1ピース・マホガニー・バックという仕様にクローム・ハードウェアがマウントされていた。

 ネックのジョイント角は5度~7度、ヘッド角は14度(50年代は17度)とオリジナルとは異なっている部分も多く、当然サウンド・キャラクターも異なる。しかし、メイプル、マホガニーともに現代のそれよりもはるかに良質な材が使用されており、ビンテージ・ギターとしての価値も非常に高くなっている。

 この年代のギターの愛用者としては日本のトップ・ギタリスト、Charが有名。名曲「Wondering Again」のギター・ソロで、68年型レス・ポールのトーンを満喫できる。

【1969年型】ネックをマホガニーの3ピース化に加え、ジョイント方法、ボディ構造も変更

 1969年にはヘッドストック・サイズが大きくなり、ネックはマホガニーの3ピースへと変更、それまでフロント・ピックアップ・キャビティの中央付近まで挿入されていたネックは、キャビティ内のネック側壁部までのジョイントとなる。そしてボディは3ピース・メイプル・トップ、バックのマホガニーに関してはまるでパンケーキのような2段の積層構造になった。1969年は会社自体がECL(のちのノーリン)へと売却される年であり、その後の70年代には生産性を優先した量産体制システムが敷かれることになる。Y&Tのデイブ・メニケッティは、この年代のレス・ポールを改造したギターを使い、名演を残している。